Episode:80
「げ、なんでです」
「あなた、そーゆーの出来るでしょ。しらばっくれるのはナシよ」
――なんの話かな?
なんかよくわかんないけどイマド、すっごい憮然とした表情してる。
「同類の目が、誤魔化せるわけないでしょ」
「――わかりましたよ、行きますって」
うーん、謎。おばさん「同類」って言ってるけど、でもおばさんと同類にされるって、なんかすっごくイヤかもだし。
別におばさんが悪い人とか言わないし、すっごい美人だけど、なんか微妙にイヤ。
でもイマドが囮してくれるみたいだから、いいかな♪
「ちょっとカレアナ、いくらなんでもスラムと無関係な子を巻き込むのは……」
「どの子ならいいとかってこと、あたしはないと思うわ」
レニーサさんの言葉に、ずばっとお母さん、切り返して。
「それに心配だったら、周りにこっそり人を置いとけばいいでしょ。
もっとも彼もシエラ学院の学年次席だから、よっぽどじゃなきゃどうってことないわよ」
「シエラ学院……?!」
あ、そう言えばここの人たち、イマドとかルーフェイアの素性は、知らないんだっけ。
「まさかシーモア、お前より上なのか?」
「悔しいけどね」
ガルシィに訊かれて、シーモアが答えて。
でもほんと、イマドってサボってるくせにしっかり次席なのよね。シーモアも頑張ってるしスジもいいと思うんだけど、差が歴然としてて、どうしても追いつけないんだもん。
「そうは見えねぇけどなぁ」
「ほっといてください」
さすがにこう言われちゃうと、イマドもちょっとカチンと来るみたい。
――あたしも今度、言ってみようかな?
「だけど次席ってことは、まだその上がいるんだろう? 学院ってのはつくづく、とんでもないところだな」
ダグさんが、妙な事で感心して。
「けどよ、その首席ってのは誰なんだ? お前よりゴツいやつなのか?」
この言葉にあたしとシーモアとイマド、思わず顔を見合わせちゃった。
「うちの学年の首席は……」
みんなで指差してみる。
「マジかよ」
「ありえん」
ダグだけじゃなくて、うちのリーダーまでそんな台詞。でも、気持ちは分かる。
だって指差した先ったら、イマドよりずっと小柄で華奢な、きょとんとした顔のルーフェイア。
――それも、お父さんのお膝の上で。
「あの、どうか……なさったんですか?」
「世の中ってのは、やっぱどうかしてるぜ」
今度ばっかりはダグの言葉に、あたしも大賛成だったの。