Episode:08
「ごめんね、あなたたちにまで気を遣わせちゃって」
「いいっていいって。それより姉ちゃん、早く食べちゃいなよ。
食べてないの、もう姉ちゃんだけだぜ?」
「えっ?……うそ……」
子供たちはまだともかく、気がつくとイマドまでいつのまにか食べ終えている。
――いったいいつの間に、食べたんだろう?
ともかくあたしだけ食べ終わっていないのもおかしいから、急いで手をつけた。
子供たちはまとめて、イマドが話し相手になっている。
「兄ちゃんさ、昼間すごかったよな〜」
「お姉ちゃんも強かったよね?」
「そりゃまぁ、俺らいちおう学院生だかんな」
けっこうイマド、嬉しそうだ。
でも確かに、学院生の強さは半端じゃない。あたしたちくらいの年でも――上級傭兵の候補生ともいえるAクラスは特に――みっちり仕込まれている。
「そっか〜。俺も入りたいんだよな」
「ムリだよ〜」
あはは、と子供たちの笑い声が響いた。
「やっぱりさ、シーモアお姉ちゃんとか、ナティお姉ちゃんみたいに強くなくっちゃ」
「シーモアとナティ……ナティエス?!」
唐突に飛び出した名前に驚く。
「あれっ、姉ちゃんシーモアの姉キとナティねぇ、知ってるんだ?
――もしかして、ダチとか?」
「あ、うん。そうだけど?」
なぁんだと一斉に子供たちがうなずく。
「どうりでメチャメチャ強いワケだよな〜」
「うん!」
子供たちが納得する。
けどあたしはそれどころじゃなかった。
――だから、イマドが言いたがらなかったんだ。
理由はともあれ、銃撃戦に巻き込まれるような子供たちだ。とうぜん何か裏が、それもとんでもないものがあるんだろう。
その子供たちがシーモアとナティエスを知っていて、なおかつ彼女たちはスラムへと出かけて行った。
このことに、一瞬息苦しくなる。
正確なことは分からないけれど、ベルデナードのスラムには……銃撃戦以上のものが待っているはずだ。
視線をやると、イマドが真剣な顔をしていた。その瞳が「半端な話じゃない」と言っている。
「――ねぇ」
子供たちの方に向き直った。
「シーモアもナティエスも、大事な友達なの。何があったか……教えてくれる?」
きっとあたし、厳しい顔をしていたんだろう。子供たちがごくりとつばを飲んだ。