Episode:78
「確実に口を割らせる方法なら、あるけど?」
それにしても悪戯っぽい笑顔でそう言うこの人、とても娘がいるようには見えないなぁ。
「本当に?
こっちの人間ももそうだけど、連中の口の堅さ半端じゃないわよ」
「大丈夫、喋らせる必要なんてないもの」
これには尋ねたレニーサさんも合わせて、みんなで顔を見合わせちゃって。
――どうやってだろ?
いちおうダンナさんと娘のルーフェイアと、あとどういうわけかイマドは意味がわかってるみたいだけど……。
「よく分からないわ。ちゃんと説明してもらえる?」
「もちろん」
それからちょっとだけルーフェイアのお母さん、なんとも言えない表情で話し出して。
「あたし、念話できるのよ。
だからそれ使えば、相手がだんまりでも、それなりに読めるわ」
「それって……」
とんでもない言葉に、思わずみんな一歩引いちゃったり。
「まさか、今も――?!」
「全部じゃないけどね」
おばさんが、さらっと答える。
「でもほら、街中で他人のお喋りが聞こえたり、するでしょ? あたしたちにとっては、そんなものなのよ。
だから集中してないと分からないし、聞こえても背景知らないから、意味がないの」
「そうなんだ……」
そゆのって、なんでもかんでも分かっちゃうのかと思ってたけど、ちょっと違うみたい。
「そういう家系があるとは、聞いたことあったけど……」
「まぁねー、うちの家系、おかしいから」
言ってルーフェイアのお母さん、けらけら笑う。
「確かにあなた見てると、おかしな家系ってのは納得出来るわね」
「ひどいわね」
「あらそうでしょう?
けどそんな反則技が本当にあるなら、手がないこともないわ」
――レニーサさん、すごいかも。
あたしたちが戸惑ってる間に、あっさり順応しちゃってるもん。見かけによらず修羅場くぐってるって聞いたことあるけど、ホントだったのかな?
なんて思ってるうちに、レニーサさんがちょっとだけ真剣な表情になったの。
「エマンシオ・ファミリーに繋がるセンなら、心当たりがあるのよ」
「――姐さん、マジでなんでも知ってますね」
ダグじゃないけど、ほんとほんと。
今度どこから情報仕入れてるのか、教えてもらおうかな?
「半分商売だもの。
まぁそれはともかく、最近格安のクスリばら撒かれてる話は、知ってる?」
レニーサさんの言葉に、みんなが一斉にうなずいて。
当たり前って言えば当たり前だけど、クスリって値段が決まってる。なのにここんとこそれ無視して、激安で売りさばく連中がいるって話だった。
で、大騒ぎになってクリアゾンのおじさんたちが、血眼になって探してるんだけど、なんかよく分かんないって言うの。
「もしかして、そのクスリが?」
あたしたちの問いにレニーサさん、ちょっとだけ嘲って。
「エマンシオ・ファミリーが、最近ものすごい量を買い付けて運び込んでるのは、確かなのよ。
で、それと同じ頃から出回った、格安のクスリ。おかしくない?」
「あ……」
この町へ入ってくるクスリの量は、ツテのある人ならだいたい分かる。だから出回る量も、見当がつく。
それが急に増えてて、しかも買い付けた連中が分かってるとしたら……。