Episode:72
「綺麗な人じゃん」
「ルーフェイアとは、ちょっと雰囲気違うけどね」
あたしとシーモアが囁いてたら、お母さんってばすたすた、こっちまで来て。
「あら、いいとこに来たわね〜♪」
「ど、どうしてここにいるの……」
嬉しそうなお母さんと、呆然としてるルーフェイアとが、妙に面白かったり。
「そりゃ、あんた探してたからに決まってるじゃない」
――えーと。
なんでルーフェイア探すと、ここのお店に来るのかな? なんかワケわかんないお母さん。
そうこうしてたら、またドアが開いて人が入ってきて。
「カレアナの姐さん、お嬢さんの居場所分かりました」
「うん、ここにいるものね」
「――へ?」
入ってきたの、借金の取り立て屋してるレード。
しかもどういうわけかルーフェイアとイマド、この人知ってたみたい。
「あ、昼間の……」
「オヤジ、紅玉と借金との差額分、こいつに返せっての」
「げ、なんで……」
挙句になんか、込み入った事情まであるみたいだし。
けど借金の取り立て屋に借金させるなんて、ルーフェイアったら凄いかも。
レニーサさんとルーフェイアのお母さんなんて、もう爆笑しまくってる。
「レード、今日のあなたはよっぽど運がないみたいね。
初めまして、お二人さん。あたしはレニーサ、一応ここの主人よ」
「あ、はい、初めまして。
えっと、ルーフェイア=グレイスです」
あ、ルーフェイアったら見惚れてる♪
――けどその気持ち、分かるな。
レニーサさんって薄い茶色の髪に透き通った薄紫の瞳で、しかも独特の雰囲気あるし。
「確かにこの子、あなたの娘ね。似てるもの」
「そうよ〜♪
ね? 言ったとおり、どっから見ても可愛いでしょ?」
おばさん、それ親バカ――じゃないんだっけ、ルーフェイアの場合は。
もっとも言われてる彼女のほうは、やたらイヤそうな顔してたり。
「母さん、そういうわけの分からないこと言うの、やめてよ……」
「なによそれ」
まるで母娘漫才。
で、延々とそのまま続きそうな気配に、レニーサさんが笑いながら出てきて遮って。
「それにしても驚いた。昼間のこの子が、ディアスの娘だったなんて」
「父を、知ってるんですか……?」
ルーフェイアが尋ねる。
まぁ彼女のお父さん、このスラムじゃ超有名人らしいんだけど。
「あたしは彼が、ここにいたころから知ってるの。
けどまさか結婚して、娘まで生まれてるなんて思わなかったわね」
――同感。
「親だ」って来たから違和感感じなかったけど、ルーフェイアのお父さんってば独りで歩いてたら、気ままにやってる独身にしか見えないもん。
「ま、ディアスだもん」
しかもおばさん、意味不明――だけど妙に納得――のこと言うし。
ルーフェイアの両親って好き勝手やってるみたいだけど、案外これで上手くいってるのかも。