Episode:71
◇Nattiess
冬の寒空だっていうのにあたしたち、なんだかぞろぞろ御一行様してたの。
なにしろレニーサさんのお店ってば、アジトとちょうど正反対。スラムったってそれなりの広さはあるから、けっこう歩かないと着かないし。
「――寒い」
「もう、文句言わないの! だいいちルーフェイアなんか、けろっとしてるじゃない」
「俺、寒いの嫌いなんだっての」
イマドったらデカいくせに、なっさけないこと言ってる。
だけどルーフェイアったら、冗談半分の言葉を本気にしちゃって。
「ねぇ、大丈夫……? あたしの上着、着る?」
「へ? いや、そこまで凍えちゃいねぇって」
慌ててイマドが断るのが、すっごく笑えた。
「『ルーフェイアの性格は知ってるだろう』とか言ってたの、誰だったっけね?」
ここぞとばっかりに、シーモアも突っ込むし♪
「てめぇらなぁ……」
イマドっていっつも平然とした顔してるから、いじめるの面白いのよね。
けど、しっかり誤算があったり。
「あぁぁ、ルーフェイア、そんな顔するなって」
無関係なはずの彼女が、困って泣き出しそうになっちゃうんだもん。
「だってイマド、ずっとあったかいケンディクにいたんだし……」
「分かった分かった! ほら、もう着くから」
シーモアが、急いで話題ふって気をそらせて。
「ヘンなとこに店構えてんな〜」
「イマド、どこだか分かってるの?」
「あの階段降りた地下だろ?」
――イマドってわかんない。
ルーフェイアもびっくりしたみたいで、彼に尋ねた。
「よく、わかるね……」
「いや、あてずっぽう」
――もっとよくわかんない。
ホントこいつ、何考えてるんだろ。
分かってるのは、ルーフェイアが絡むと見境なくなるってことだけで、あとはさっぱりわかんないヤツ。
まぁ、悪いヤツじゃないんだけどさ……。
でもルーフェイアとイマド、せっかく並んでみても、カップルって言うより兄妹。
ルーフェイアったらあたしよりまだちっちゃいし、イマドったら学年でもいちばん大きいし。
挙句に何かって言うとルーフェイアの面倒見てるわけだから、ホントお兄ちゃん。
――しかも、ルーフェイアがね。
彼女ってば何がどうなってるのか、外見以上に中身が子供。頭は滅法いいしワケわかんないくらい強い――イマドより上――のに、それ以外はもう呆れるくらいなんにも知らないんだもん。
イマドが好きでいつもくっついてるけど、本人そういうの、自覚してるかどうかめいっぱい怪しいし。
「お前たち、なにをじゃれてるんだ。早く来い」
遊んでるふうに見えたみたいで、ガルシィが呆れ顔であたしたちを呼んだ。
ガルシィ、あたしたち、ルーフェイアのお父さん、あのジャーナリストの順で階段を降りる。
にしてもこの廊下、暗いなぁ。
「お、無事帰って来たか。
――っておい、ガルシィ、ホントにおめぇまで来たのか?」
あたしたちがお店に入ったら、なんだかダグがいて、思いっきり驚いてるし。
「ディアスさんに呼ばれたからな」
うちのリーダーは、まるっきり平気な顔だけど。
でももっとびっくりしたの、ルーフェイアだったり。
「か、母さん?!」
奥のほうからレニーサさんと一緒に出てきた女性をみて、半分硬直してるの。
って、この人がお母さんなのか……。
ルーフェイアとおんなじ金髪碧眼で、並んで立ったら誰が見たって、母娘って言うはず。