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Episode:66

「イマド、分かる……?」

 念話の能力が高い人だと、言葉がわからなくても意味を読み取れるのを思い出して、彼に訊いてみる。

「話が込み入ってて、なんだかわかんねぇ」

「そっか……」


 ある程度の意味は分かっても背景が分からないから、結局全体の意味は分からない、ということらしい。

 こうなると、誰かに説明してもらうしかなさそうだった。

 だけど誰かに聞こうにも、父さんはもちろんシーモアもナティエスも、なんだか早口で話に加わってしまっている。


「ま、ひとくぎりつけば誰か教えてくれるだろ」

「――そうだね」

 待つよりほかなさそうだった。


 部屋の隅に座りこんで、あたしの知らない言葉を話しているみんなを、ぼんやりと眺める。

 不思議な感じだった。

 こういう風に相手の言葉が分からないというのは――ほとんど初めての経験だ。


 小さい頃から両親に連れられて世界各地を転々としていたおかげで、あたしが話せる言葉は多い。おもだったものは全部読み書きできるし、通常は知られていないヴァサーナ語も、日常会話程度ならどうにかこなせる。

 ほかにもシュマー内の公用語が古代ローム語の変形だから、ローム語と古代ローム語の両方も出来た。


 でもシーモアや父さんたちが使っているスラングは、単語の使い方さえ違っていて、ロデスティオ語が出来ても理解できない。

 よく知っているはずのみんなが、今だけ遠く見えた。


――戦争って、こういうところから始まるのかな。

 ふと、そう思う。


 今のあたしみたいに、どこかの誰かが何故か遠く見えて……相手の言っていることも考えていることも分からなくて、まるで魔物みたいに見えてしまうのかもしれない。

 そうやっていろいろと思いをめぐらしているうちに、ガルシィさんが立ち上がった。


「どうやら、話がまとまったみてぇだな」

「うん」

 あたしたちも立ち上がる。

 ガルシィさんがこっちへと視線を向けた。


「レニーサ――2人――」

「え?」

 困ってイマドのほうを見る。


「今、なんて……?」

「一緒に来いってさ」

 彼があっさりと通訳してくれた。今度は内容が単純だったから、読み取れたんだろう。

 ガルシィさんがはっとした顔になる。


「――客がいるのに、つい仲間内の言葉になってたみたいだな」

「いえ、あの、大丈夫ですから……」

 慌ててそう答える。

 だいいち、特に困ったわけでもない。


「それで、どこへ行かれるんですか?」

 行き先が知りたくて、あたしはガルシィさんに尋ねた。

 イマドが隣で呆れた顔をする。


「『レニーサの店』だって」

「そうなの?」

 確かに会話の中には、何度もその名前が出てたけど……。





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