Episode:65
「そのっ、ガルシィは今、ちょっと人と会ってて……」
「かまわん」
――え?
聞き覚えのある声に、驚いて顔を上げる。
イマドも気が付いたんだろう。半分確信したような声で訊いてきた。
「おい、今の」
「うん」
あの声の主を、あたしが間違えるはずもない。
少し待ってると思ったとおり、「その人」が入ってきた。
「父さん、ダグさんのご家族、もう大丈夫なの?」
訊くと父さんは、自信たっぷりにうなずいた。
――こういうとこ、どうして母さんと似てるんだろう。
困った意味で、似た者夫婦だと思う。
「ちょっと待て、『父さん』だと……?!
そうすると君は、ディアスさんの娘なのか?」
「え? じゃぁガルシィさんも、父さんご存知なんですか?」
どうも父さん、このスラムじゃよほどの有名人らしい。さっきのダグさんと、似たようなやり取りになる。
「ガルシィ、まさか『ディアス』って、この人あのディアスさんなのか?」
「うそ、信じらんない……」
しかもどういうわけか、シーモアとナティエスまでが驚いた顔になった。
確かにこのアジト?へ簡単に入れてもらってるんだから、この中に知り合いはいるんだろうけど……。
「あの、すみません、父さんとどういうお知り合いなんですか?」
きっと父さんに訊いてもごまかされてしまうだろうから、思い切ってガルシィさんにあたしは訊ねた。
一瞬の間。
「――俺たちのチームの、昔のリーダーだ」
「え?」
今聞いた言葉を、もう一度頭の中で繰り返す。
つまり父さんは昔、このチームのリーダーをやってて……なのにもうひとつのチームの、ダグさんの大先輩で……?
よく分からない。
「ガルシィ、話はもう聞いたな」
悩むあたしを無視して、父さんが話を切り出した。
「はい。もっとも、信じられませんけど」
「それはどうでもいい。
ともかく聞いたなら、これからレニーサのところへ来られるか? この話、彼女も裏があると言っている」
その言葉を聞いた途端、ガルシィさんの表情が明らかな驚きへと変わった。
「あの人が……?」
レニーサという名前には、あたしも聞き覚えがある。たしかさっき、ダグさんが落ち合う場所に決めたお店――というか、その名前だ。
けどあたしが思っていたような、単純な名前と場所ではないらしかった。
「――クリアゾン――?」
よほど驚いたのか、ここの人たちが使う言葉がスラングへと変わる。
「クリアゾン――レニーサ――」
父さんもそれに、同じスラングで答えた。こうなると共通語しか知らないあたしには、断片的な単語しか聞き取れなくなる。