Episode:64
「向こうがやってないのを証明できなければ、こっちとしては許すわけにはいかない」
「そんな……」
ここでは「疑わしきは罰せず」という原則が、通用しないのだとあたしは気付いた。
でも……。
本当にどちらも相手チームの子供を殺していないのなら、抗争はやるだけ無意味だ。
「ほんの2、3日でいい。祭りの延期は出来ないか?」
「こっちとしてはする気はない。ただ、向こうの出方次第では考えてもいい」
ゼロールさんの懇願にも、ガルシィさんが冷徹に言い放つ。
ともかく歩み寄る気配はなかった。
どうやったら上手くいくのか、必死に考える。
――そうだ。
「あの、ガルシィさん……。ダグさんと会っていただけませんか?」
「冗談を言うな」
「ルーフェイア、そいつはムチャってもんさ」
「もう、ルーフェイアったらおめでたいなぁ」
もし直接話が出来れば、なにか変えられるかもしれない。そう思って言った言葉に、ガルシィさんどころか、シーモアやナティエスまでが反対した。
「でも、会ってみれば……」
「会ってどうなる」
にべもない返事。
自分に力がないのが、悲しくてたまらなかった。
「でも、でも、殺し合いなんて……」
そんなの、いらない。
嫌と言うほど見た。あの戦場で。
誰も死にたいなんて思ってないのに、殺し合わなければいけない場所。
生き延びる唯一の方法が、人の命を絶つこと。
地獄よりもまだ、地獄に近い場所……。
「――ルーフェイア、もう考えんな。お前のせいでそうなったわけじゃ、ねぇだろ」
しゃがみこんでしまったあたしの頭を、今度はイマドが撫でた。
そして彼が言う。
――あたしの、代わりに。
「ともかくガルシィさん、ゼロールさんの言うとおりほんの2、3日、延ばせませんか?
ケリつけたい気持ちはわかりますけど、ここは戦場じゃない。
今なんとしても相手を殺さなきゃ生きていけない――そういう場所じゃないはずです」
「それでもダメだ」
もう、どうすることも出来なかった。
所詮部外者でしかないあたしたちじゃ、何も変えられない。
悔しくて哀しくて、また涙がこぼれた。
泣いてどうなるものじゃないと分かっていても、泣かずにはいられない。
「どうして、どうして……」
「ごめんよ、ルーフェイア」
シーモアとナティエスが、すまなそうに謝る。
その時、表のほうから誰かが騒ぐ声が聞こえた。




