Episode:63
「あたしらみたいな連中にここまでしてくれて……あんた、最高のダチだよ」
「ううん、ううん……だって、だって友達……」
「うん、分かってる」
それ以上、シーモアはなにも言わなかった。
イマドもなにも言わない。
すごく……すごく、静かで……。
「お待たせ〜。
あれ? シーモアったら泣かしちゃったの?」
少し経って、2人の男の人といっしょに戻ってきたナティエスが、開口いちばんそう言った。
「ち、ちがうの。あたしが勝手に泣いちゃって……」
くるりとナティエスが、あたしたちを見る。
「なんかよくわかんないけど、まぁいいかな。
ルーフェイア、イマド、この2人がうちのリーダーとサブね」
「あの、初めまして……ルーフェイア=グレイスです……」
おそるおそる名乗る。
「イマド=ザニエスです。もうシーモアとナティエスから、聞いてるでしょうけど」
イマドのほうは平然としたものだ。
「俺は……」
ゼロールさんも自己紹介しかけたけど、これは見事に無視されてしまう。
「俺がここのトップやってる、ガルシィだ」
向こうチームのトップ、力で攻めるタイプのダグさんと比べて、ガルシィさんは切れ者という感じだった。
黒い髪と浅黒い肌なのに、なぜか水色の瞳。体格も細身で、なんとなく猫科の猛獣を思わせる。
「話のさわりはナティエスから聞いた。細かい話は出来るか?」
あたしは困ってイマドを見た。
なにしろ「細かい」と言ってもほとんどは憶測で、証拠があるわけじゃない。
「申し訳ないですけど、ナティエスが言った以上のことは、俺らもよく知らないんです。
はっきりわかってるのは、ウィンを襲ったのは向こうのチームじゃないってことくらいですね」
「間違いないのか?」
見透かすような鋭さを含んだ、ガルシィさんの言葉。
「間違いないです」
でもそれをものともせず、イマドはきっぱりと答えた。
「俺ら、あの時ダグさんと一緒でしたし、その襲ってきた連中はどう見たって中年でしたから。
あと詳しいことは、ゼロールさんがそこそこ知ってると思いますけど」
「そう言われても、俺のほうも証拠はないんだが……」
どうやったら上手く信じてもらえるか考えている調子で、ゼロールさんもさっきの、『ホームレスの人が別の犯人を見た』という話を繰り返す。
「別に偏見を言うつもりはないが、ホームレスのオヤジさんが小銭欲しさにでっち上げたって可能性も、否定は出来ない。
ただあの怯えぶりからすると、多分本当じゃないかと思うんだ」
「だったらその話で、こっちの濡れ衣は晴れたことになる。それとウィンの件に関しては、向こうが関係ないのを認める。
ただそれ以前のことに関しちゃ、向こうがやったってのは否定出来ないな」
これだけの話を聞いても、ガルシィさんは冷静だった。