Episode:62
「――そうだな。ナティ、悪かった」
でもあたしの心配をよそに、イマドがあっさり頭を下げた。
「あ、そんな別に、謝ってもらわなくてもいいんだけど……」
――よかった。
2人が仲直りしてほっとする。
周囲の人たちもほっとしたんだろうか? みんななんだか笑っていて、いい雰囲気になっていた。
「やれやれ。
それでルーフェイア、座りこんでまで何を言いに来たのさ」
「えっ?」
呆れて入れてくれただけだと思っていたから、この言葉は意外だった。
「聞いて……くれるの?」
またみんなが笑う。
「ったく、あれだけのことしてくれちゃ、聞かないわけにいかないだろ?」
「ほんと。ルーフェイアがまさか、あんなに強情だなんて思わなかった」
「ごめんなさい、そういうつもりじゃ……」
またあたし、あと先考えないで、みんなに迷惑をかけちゃったみたいだ。
自分が情けなくて涙が出てくる。
「あ〜、違う違う違う!
ね、泣かないで? ほら、だから何でここへ来たの?」
「えっと……」
言わなきゃならないことはたくさんあるのに、どれから話せばいいのか分からなかった。
「えっと、だから……小さい子が殺されて……」
「ようはその話、裏があるんじゃねぇかってことなんだ」
イマドが口添えしてくれて、ようやくまともな言葉になる。
「裏? どこをどうやったらそんな話になるんだい」
「でも……」
またさっきと同じで、信じてもらえないのかと思うと悲しくて、また涙が出てくる。
「うあ! ルーフェイア、泣くんじゃないよ。
ともかくガルシィ呼んでくるから、ストップストップ」
「あ、あたし行ってくる」
慌てたシーモアをナティエスが止めて、彼女の姿がが奥に消えた。
ふっと部屋の中が静まり返る。
そして……シーモアが口を開いた。
「――ルーフェイア」
「なに……?」
彼女が一呼吸だけおく。
「どうしてわざわざ、ここまで来たんだい?」
「え?
でも、友達だから……」
シーモアがあたしの瞳を覗き込んだ。
どこか新緑にも似た、鮮やかな翠色の――真剣な瞳。
「マジでそれだけなのかい?」
「それじゃ、ダメなの……?」
もしかしてあたし、いちばん最初を間違えてしまったんだろうか?
まっすぐシーモアがあたしを見る。
「ダメじゃないさ。――ありがとう」
言葉を聞いた瞬間、胸が詰まって、あたしはまた泣き出してしまった。
そのあたしの頭を、シーモアが撫でる。