表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/131

Episode:61

◇Rufeir

 シーモアたちのアジトに入れてもらえたのは、尋ねてから1時間ほどしてからだった。

「ったく呆れたもんだよ。この寒空の下に座りこんで、ずっと待ってるなんざ」

「ほんとほんと。普通じゃ考えられない」

 シーモアとナティエスが呆れ顔だ。


「その、あったかかったから……」

「だからルーフェイア、さっきも言ったけどさ、ここらじゃ外に寝てたやつが、凍死することだってあるんだ」

「でも……」


 確かに気温は低かったけど、冬の戦闘服だったのとイマドとくっついていたのとで、さほど寒さは感じなかった。

 むしろあったかくて心地よくて、そのままつい眠ってしまったと言ったほうが正しいだろう。


「あぁもう、わかってんのかい!」

「だから分かってねぇって」

 見るとあたしが座らされてたソファの後ろで、イマドが可笑しくてたまらないという風だった。


「こいつにとっちゃ、あんなこと朝メシ前なんだっての。

 だいいちお前らだって、こいつの性格は知ってんだろ? だったら最初っから開けてやれって」

「だからって……。

 ともかくルーフェイア、冷えちゃったでしょう? これ食べて」

 ナティエスが湯気の立ったスープ――貝とお野菜と魚の身?が入ってる――を、あたしたちに差出してくれた。


「あ、美味しい」

「ほんと? よかった♪」

 口をついた言葉に、彼女が嬉しそうになる。


「俺にもくれないかね?」

 匂いに誘われたんだろう、後から来たゼロールさんもせがんだ。

「え〜、どうしよ?」

「とびっきり可愛いお嬢ちゃん、そんないぢわる言わないで、おじさんにも1杯、な?」

「やだもう、ルーフェイアの前でそんなこといわれると、イヤミにしか聞こえないじゃない!」


 褒められて何が嫌味なのか分からないけど、それでもナティエス、まんざらでもないらしい。ゼロールさんにも、スープの入った器を差し出す。


「――お前、サラの花入れ忘れたろ」

 やっぱり一口食べたイマドが、なにかよく分からないことを突っ込んだ。

「うるさいなぁ、もう! 高いから入れなかったのよ!」

「ベリルだけでも入れりゃ、もうちょい落ちつくのにな」

「もうやだ! イマドってば男子のくせに、どうしてそう料理細かいのよ!」


 気が付いたときには、言い合いが始まってしまっていた。

 当たり前だけれどこの変わった光景に、ここの人たちもみんな呆然としている。

「ナティ、とりあえずその話、あとじゃダメかい?」

 シーモアが仲裁に入る。


「え、あ、ごめん」

「あとでもう1回、教えてやろうか?」

「イマド、あなたねぇ!」

「イマド!」

 面白がって茶々を入れる彼に、あたしとナティエスの言葉が重なった。


「イマド、食べさせてもらったのにそんなこと……言ったらダメだよ……」

 きっとナティエスだって、一生懸命作ったはずだ。

 一瞬イマドと視線が合う。

 もしかして、怒っちゃっただろうか?





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ