Episode:61
◇Rufeir
シーモアたちのアジトに入れてもらえたのは、尋ねてから1時間ほどしてからだった。
「ったく呆れたもんだよ。この寒空の下に座りこんで、ずっと待ってるなんざ」
「ほんとほんと。普通じゃ考えられない」
シーモアとナティエスが呆れ顔だ。
「その、あったかかったから……」
「だからルーフェイア、さっきも言ったけどさ、ここらじゃ外に寝てたやつが、凍死することだってあるんだ」
「でも……」
確かに気温は低かったけど、冬の戦闘服だったのとイマドとくっついていたのとで、さほど寒さは感じなかった。
むしろあったかくて心地よくて、そのままつい眠ってしまったと言ったほうが正しいだろう。
「あぁもう、わかってんのかい!」
「だから分かってねぇって」
見るとあたしが座らされてたソファの後ろで、イマドが可笑しくてたまらないという風だった。
「こいつにとっちゃ、あんなこと朝メシ前なんだっての。
だいいちお前らだって、こいつの性格は知ってんだろ? だったら最初っから開けてやれって」
「だからって……。
ともかくルーフェイア、冷えちゃったでしょう? これ食べて」
ナティエスが湯気の立ったスープ――貝とお野菜と魚の身?が入ってる――を、あたしたちに差出してくれた。
「あ、美味しい」
「ほんと? よかった♪」
口をついた言葉に、彼女が嬉しそうになる。
「俺にもくれないかね?」
匂いに誘われたんだろう、後から来たゼロールさんもせがんだ。
「え〜、どうしよ?」
「とびっきり可愛いお嬢ちゃん、そんないぢわる言わないで、おじさんにも1杯、な?」
「やだもう、ルーフェイアの前でそんなこといわれると、イヤミにしか聞こえないじゃない!」
褒められて何が嫌味なのか分からないけど、それでもナティエス、まんざらでもないらしい。ゼロールさんにも、スープの入った器を差し出す。
「――お前、サラの花入れ忘れたろ」
やっぱり一口食べたイマドが、なにかよく分からないことを突っ込んだ。
「うるさいなぁ、もう! 高いから入れなかったのよ!」
「ベリルだけでも入れりゃ、もうちょい落ちつくのにな」
「もうやだ! イマドってば男子のくせに、どうしてそう料理細かいのよ!」
気が付いたときには、言い合いが始まってしまっていた。
当たり前だけれどこの変わった光景に、ここの人たちもみんな呆然としている。
「ナティ、とりあえずその話、あとじゃダメかい?」
シーモアが仲裁に入る。
「え、あ、ごめん」
「あとでもう1回、教えてやろうか?」
「イマド、あなたねぇ!」
「イマド!」
面白がって茶々を入れる彼に、あたしとナティエスの言葉が重なった。
「イマド、食べさせてもらったのにそんなこと……言ったらダメだよ……」
きっとナティエスだって、一生懸命作ったはずだ。
一瞬イマドと視線が合う。
もしかして、怒っちゃっただろうか?