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Episode:06

◇Rufeir

「おーい、メシできたぞ」

 そう言って入ってきたイマドに、真っ先に反応したのは、子供たちだった。

 聞いたところでは3人とも、ベルデナードのスラムからここまで来たらしい。ただどうしてケンディクへ来ることになったのかはまでは、どうしても話してくれなかった。


「うひゃぁ、ご馳走だよ!」

 3人のなかではいちばん年かさらしい少年が、目をまるくした。

「うわぁ、いっぱいだ〜!!」

「すっごぉい、これ全部食べていいの?!」

 大騒ぎになる。


「……そこらへんのありあわせだって。まぁいいや、しっかり食えよ?」

「うん!」

 一斉に手が伸びる。

 たちまち奪い合いが始まった。


「あ、だめよ、ケンカなんかしちゃ……ほら、たくさんあるんだもの」

 急いで間に入る。

「けど、こいつ俺の盗ったんだぜ!」

「ちがうよ、これあたしのだもん!!」


 この子達、満足に食べていなかったんだろうか? 自分の分を確保するのに必死だ。

――こんなに小さいのに。

 スラムは過酷だと聞いたことがあるけど、急に実感して悲しくなる。

 あたしも戦場は辛かったけど、こういう思いはしたことがない。


「あれっ、お姉ちゃんどうしたの?」

「あ〜、泣かした〜!!」

「俺じゃないぞ!」

 子供たちに騒がれて、自分がつい涙をこぼしていたことに気付く。


「あ、えっと、違うの。ケンカするほど……みんながお腹、空かせてたんだって思って……。

――ゆっくり、食べてね?」

 3人が静まり返った。


「どうしたの?」

「――ごめんなさい。もうケンカしない」

 子供たちが口々に謝る。


「そんな、いいのよ。あたしがすぐ泣いちゃうのが悪いんだもの。

 ほら、ミルクもあるからね」

「うん、お姉ちゃんありがと!」

 今度は3人とも、ケンカをせずにお行儀よく食べ始めた。その姿にほっとする。


「おい、これお前のな」

 ぼうっと子供たちを眺めていたら、イマドがお皿を出してくれた。子供たちの分とは別に、いろいろ挟んだパンが乗せられてる。

「ありがと」

 あたしはどうも生存競争に弱いから、わざわざわけておいてくれたんだろう。


 それにしてもイマド、いったい何人分作ったんだろう? 子供たちのはきっちり3人前以上あるし、自分の分も2人前くらい確保している。

――子供5人で6人前?

 すごいとしか言いようがない。

 半分呆れながら、あたしも手をつけた。


「あ、おいしい♪」

 思わずそう言葉が出る。

 でも食べながら……どうしても気になることがあった。





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