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Episode:59

「なっ、こっ、おい!」

「……どうしたの?」

 どうしたの、じゃねぇだろ……。

 けどマジでこいつ、何にも分かってなかった。


「このほうが、寒くないでしょ?」

「いや、そりゃそうだけどよ……」

 そう言う問題じゃないだろうが。


――ただこいつ、そういうのはどっかに落としてきてっからなぁ。


 今だって頭のてっぺんからつま先まで、全部まとめて「寒いといけない」だけで埋まりきってるし。

 と、ぽつりとこいつがつぶやいた。


「思い出すな……」

「何がだ?」

 珍しくこいつから、安心しきった雰囲気が伝わってくる。


 いつも不安げにしているルーフェイア。

 それが今は、ない。


「よくね、戦場にいて野宿の時とか、母さんにこうしてもらったの。

――あったかくて好きだったな」

「へぇ……」

 人一倍脆いこいつがどうして戦場で正気でいられたのか、答えが分かった気がした。


「戦場、大っ嫌いだけど……学院来てからさみしかった……」

 ルーフェイアの瞳から、一筋涙がこぼれる。

 こんなのタシュア先輩あたりが見た日にゃ、きっと「甘ったれ」とかなんとか言って突っ込むだろう。


 とりあえずこいつがいちばん望んでる通りに頭を撫でてやると、そのまま小さい子供みたいに目を閉じちまった。

 この状況で度胸あることに、眠くなったらしい。


――ま、いいか。

 戦場育ちのせいで、寝られそうな時に寝ちまうだけかもしれねぇし。


「なんかあったら起こしてやるよ」

「うん……」


 言うが早いが、たちまち寝入っちまった。あとはどれだけシーモアたちと根競べできるか、だ。

 でも幸いこいつが――ルーフェイアはかなり体温が高い――くっついてるお陰で、寒さは感じない。

 こいつの様子を見ながら、俺は待つことにした。




 それから多分、1時間くらい過ぎた頃だ。

「イマドっ! あんたがついててなにやってんのさっ!」

「お、やっと開ける気になったか」

 とうとう根負けしたシーモアたちがドアを開けた。


「『開ける気になったか』じゃないよっ!

 ほらっ、ガルシィに許可もらったから、早く入りな!!」

「りょーかいっと」

 ただそうは言っても、すぐには動けねぇわけで。


「ルーフェイア、起きろって」

 まず寄りかかってるこいつを起こさないことにゃ、俺も身動きできない。


――ってあれ?

 嘘みてぇだけどルーフェイアのヤツ、熟睡してやがる。

 いつも気配だけで目を覚ますこいつがこれは、かなり珍しい。





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