Episode:53
◇Caleana
「ど〜こいっちゃったのかしらねぇ?」
久々のスラム。時は夕暮れ過ぎ。
もうそろそろ、その辺の家じゃ夕食の時間かしら?
けどここ……。
迷うって言うほどには変わっちゃないけど、やっぱりどっか馴染まないのよね。だいいちあたし、ディアスと違ってここの育ちじゃないし。
それになにより独りだと、ちっとも進めないのが困りもの。
「よぉ、何か探しもんかい」
ずっとこの調子なのよねぇ。
「人を探してるのよ。金髪で太刀持った美少女、見なかったかしら?
じゃなきゃバスタードソード持った、淡い金髪の美丈夫でもいいわ」
「どっちも見なかったなぁ。
けどよ、金髪で太刀持った美女ならみたぜ」
――あら。
この男、ちょっとは頭が回る?
「ふぅん、どこで?」
おもしろそうだから乗ってみる。
「そりゃ決まってるだろう。ここでさ」
わかりきった答えだけど、まぁ合格かしら?
さて、次はどう来るかしらねぇ♪
「とりあえずその辺入らねぇか? 今夜は冷えそうだしな」
「そぉねぇ、どうしようかしら?」
ちょっと迷ったフリして、からかってみたりして。
「いいじゃねぇか。その尋ね人は、うちの連中にでも探させっからさ」
「あら、あなた偉いのね?」
案外、上手いのが引っかかったのかも。
――けど、何者かしら?
なにせあたしはスラムには疎いから、ぱっと見ただけじゃどこの誰だかわかんなくて困るわ。
しょうがないから意識を凝らして、この男を探ってみる。
実言えばあたし、気合入れれば人の考えてることをある程度――まぁ漠然としたイメージ程度だけど――は読めるくらいの力は、あったりする。
もっともこれって珍しい話じゃなくて、シュマーの家にはあたしを上回る連中がごろごろしてるし、それ以外にも幾つも、この手の血筋はあるし。
って、ちょっと待ちなさいよ……。
「ねぇ、もう1回聞くけど……本当に金髪の美少女、知らないのね?」
「ああ。見たこともねぇなぁ」
なるほど、こう来るわけね。
「おかしいわねぇ。確かにここへ来たはずなんだけど。それになんたって、すぐ噂になる子だし」
さてこの男、あたしの表情が変わったのに気が付いたかしら?
「まぁいいじゃねぇか。そのうち見つかるさ」
「そのうちじゃ遅いのよ」
言いながらあたし、手にした太刀を半分抜いて見せた。
「物騒だなぁ。
けどスラムったって広いんだ。そう簡単には見つからねぇことくらい、あんただって分かるだろ?」
「普通ならね」
同時に一閃。
男の前髪がひと房宙に舞う。
「さぁ、白状してもらいましょうか? 昼間あの子に会ったわね」
太刀を付きつける。