Episode:52
「こいつら調べりゃ、どこの誰が襲ったか分かりそうだな」
相変わらず死体を覗きこみながら、イマドが面白そうに言う。
「生きてりゃもうちょっと、楽に分かんだけどな。けどまぁ、死体でも少しは……」
「イマド、下がって!」
嫌な気配を感じて、あたしは叫んだ。
同時にイマドに、防御魔法をかける。
「へ?
――っとやべぇ!」
割合近くに倒れていた2つの遺体と、その周囲がいきなり燃え上がる。
かなりの高熱だ。
でも下がるのが早かったのと、魔法が間に合ったのとで、イマドにはケガがなくて済んだ。
「ったく危ねぇなぁ。どういう仕掛けだよ!」
炎が収まるのを待って、もう一度近づいた彼が毒づく。
「たぶん……誰か他に、仲間がいたんだと思う」
あるいは、監視役か。
「そうなのかい?
にしても、一発でこの有様とは……やっぱり魔法かなにかか?」
「はい」
不思議そうなゼロールさんに答える。取材には慣れてても、戦闘は本業じゃないから、よく分からないんだろう。
「炎系魔法の、上位だと思います。最上位だと、もうちょっと効果範囲が広いので。
両方の遺体の内よりに1回づつと、中央狙って1回の合計3回で――」
「解説、またあとでな」
イマドに遮られる。
「あ、ごめん……」
どうもあたし、ことが魔法となると、いろいろ言ってしまうみたいだ。
「――これで手がかりは無しか」
やっぱり遺体をみてた父さんが、ぼそっとつぶやいた。
なにしろ着ていたものさえ、もう分からない。
「どっちにしてもシーモアたちに知らせねぇと。それにこれ、もしかするとダグさんのチームと……あと家族もヤバいんじゃ?」
「あっ……!」
イマドが何気なく言った言葉に、思わずあたしは声をあげた。
「やべぇ、早く仲間集めて……お袋たちも移動させないと……」
ダグさんも心なしか青ざめる。
「俺が家のほう、行きましょうか? で、ダグさんが仲間集めれば早いですよ。
ルーフェイア、お前シーモアたちんとこ知らせて来い」
「あ、うん。そしたら、行ってくるね」
あたしは太刀を持ちなおして走り出して――父さんに襟首を掴まれた。
「父さん、放して……」
これじゃまるで子猫だ。
けど放してもらえず、結局そのまま引き止められる。
「ダグ、仲間を集めろ。イマド、この子と一緒に行ってくれ」
「あ、わかりました。でもそうすると、俺の家族は?」
ダグさんが心配そうな表情を見せる。
「俺が行く」
同時にいきなり襟首を放されて、あやうく前へ転びかけた。
「父さん、ひどい……」
なのに抗議して振り向いた時には、もう父さんは背中を向けて歩き出した後だ。
「お前んち、お袋さんもめちゃくちゃだけど、親父さんも相当だな」
「それ、言わないで……」
呆れるイマドに返す言葉がない。
「まぁいいや、ともかく行こうぜ。ダグさん、それじゃまた後で」
「ああ。
そうだ、集合場所はレニーサさんの店にしてくれ。場所は町の誰かに聞けば分かる」
「了解です」
答えて、あたしたちは左右に別れた。