表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/131

Episode:05

◇Imad

 診療所と学院長とに全員引き渡して、やっと一息ついたのは、もう夕暮れになってからだった。撃たれたガキが連れてきたチビどもには、ルーフェイアがついてる。


 軽食6人前ほど作りながら、俺は迷ってた。

 あいつらの持ってきた「ワケ」は、あんまいいもんじゃない。けど、見過ごせる話でもねぇのが困る。つか、もしルーフェイアのやつが聞いたら、速攻でここ飛び出しちまうだろう。

 んでもって抗争のど真ん中に、飛び込んじまうことになる。


 じつ言うとシーモアとナティエスが、慌ててどっかへ出かけた時から、なんかおかしいとは思ってた。

 けどまさか、これほどでかい抗争のために戻ったとは……。


 あの2人ってのはロデスティオの首都、ベルデナードのスラム出身だ。しかもそのスラムにいくつもある、暗殺集団――ギャング団なんかじゃない――の中でも、1、2を争うチームの所属だったって聞いてる。

 で、そこがナワバリだかをめぐって、別のところと全面衝突はじめたらしい。駅での銃撃戦はその延長戦だ。

 前哨戦でかなり形勢がヤバくなったシーモアたちの仲間が、せめてチビどもだけでもシーモアたちの所へってつもりで逃がしたものの尾けられて、最後の最後で鉢合わせしたっぽかった。


 パンを重ねながら、ぼうっと考える。

 ルーフェイアのヤツは、間違いなく行こうとするだろう。

 なんとかして知られないようにすりゃ、いいんだろうけど……チビどもが来ちまった以上、それもムリだった。確実にバレる。


 止めるか、行かせるか。

――ムリだな。

 あいつが行く気になったら、止めようなんてない。イザとなりゃ学院にシュマーの船呼んででも、出てっちまうはずだ。


 しかもマズいことに、良くも悪くもルーフェイアのヤツは、素直で疑うってこと知らない。そのうえ自分が、やたら人目引く美少女だっての、まるっきり自覚してねぇ。

 そんなのがひとりでスラムをウロウロするとか、考えるまでもなくヤバ過ぎだろう。肉食竜の前に、肉の塊置くようなもんだ。

 だったら行かせて、フォローするほうがまだマシだった。


 ベルデナードまでは、かなり距離がある。

 いちばん早いのは、ケンディクから海超えて、大陸東南部の元ワサール国へ。そっから列車使って、隣のロデスティオに入るルートだろう。

 船で丸1日、列車で4日の長旅だ。


 通り抜けるワサールは、植民地化されたせいでいまもいろいろキナ臭いけど、町の治安はそれなりだ。ちゃんと列車も運行してるし、沿岸部の観光地は今も変わらず賑わってるっていう。

 ロデスティオのほうも軍政敷いてっけど、国内はけっこう自由らしい。首都のベルデナードは、観光でも有名なくらいだ。あと、あんま覚えてないし実感ねぇけど、俺の生まれた国だったりする。


 ただ首都のスラムとか言われても、俺は場所さえよく知らなかった。

 まともに物事覚えてる年には、もうこの学院にいたから、俺がちゃんと知ってんのはケンディクと、叔父さんがいるアヴァン方面だけだ。

 ともかく行き当たりばったりで行って、迷ってるヒマはねぇから、下調べしとかないとヤバいだろう。


――チビどもにでもきくか。

 多分いちばん現実的な手段に、考えが落ち着く。どう聞き出すかって問題があるけど、まぁどうにかなるだろう。

 あとはどんだけ早く、ここを出れるかだ。

 その抗争とやらがいつかは知らねぇけど、シーモアたちが速攻で出てってるから、そんなに余裕ねぇんだろう。


 行って、どうにか出来るとは思わなかった。

 けどルーフェイアのヤツはぜったい引かねぇだろうし、俺もあいつらにはけっこう借りがある。

 だから、やれるだけのことはやってみるつもりだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ