Episode:49
「分かったの?」
「それがわかんねぇんだって! なにせこの辺知らねぇから、どっちの方角かも見当つかねぇんだよ!」
「――え?」
この言い方……。
急いで記憶を探って思い出す。
そう、確か母さんが時々、こういう言い方をしてて……。
「ねぇ、何か目印になりそうなもの、ない?」
よくこうして地図とつき合わせて、位置を割り出していたはずだ。
「目印? そう言われても……待てよ、ジャンク屋があるな。掘っ立て小屋みてぇので、裏手にジャンク品が山積みになってて……」
「そりゃドアルんとこだ。そのガキ、やっぱ寄り道しやがったな。
――ついて来い、こっちに抜け道がある」
急に右に折れたダグさんに続いて、慌ててみんなで進路変更する。
「あそこから連中のアジトまでは、使う道はひとつだ。これ以上は道草もしねぇだろうし、間違いなくどっかで捕まえられるぞ」
場所さえ分かってしまえばあとはダグさんの独壇場で、細い抜け道を迷うことなく選んで行く。
「あっ、ごめんね!」
転がされているごみバケツを飛び越えようとして、餌を探していた野良犬を蹴飛ばしかけた。
「お前、イヌに謝るなよ」
「でも、邪魔しちゃったもの……」
それ以外にもいろいろ障害物があったり塀の隙間を抜けたり、挙句に右左と折れていくから、学院のランニングよりよっぽどハードだ。
「ここ曲がりゃ、あとはいっぽんだ」
先頭のダグさんがそう言って、スピードを上げる。
けどそれを上回ってスピードを上げたのがイマドだ。
「いたぞ!」
「ほんとに?!」
あたしも並んでスピードを上げる。
「お〜い、いくらなんでも……」
後ろからゼロールさんが何か言っているのが聞こえたけど、気にしてる暇がなかった。
「そこを道なりに右だ!」
「うん」
これなら何かある前に、ウィンのところへ着けるだろう。
そう思った矢先だった。
――殺気!
ごく微かだけど、感じる。
「イマド、ごめんね、先に行くわ!」
「なっ……!」
呆れるイマドの前で、あたしは自分に防御魔法と、高速魔法をかけた。
もう一段スピードが上がる。
角を曲がると、ウィンの後姿が見えた。
だけど同時に、殺気がふくれあがる。