Episode:48
「おい、いったいなんなんだ?」
「ウィンです。
ダグさんと入れ違いに帰ったんですけど、向こうのチームの子で、ひとりで帰って……」
要領を得ない説明だったけれど、ダグさんもゼロールさんも、これだけで意味は察してくれた。
「そうか、あの子がチームの子なのは知られてる。もしかしたら、狙われるかもしれない。
――ダグくん、スラムを案内してくれないか?」
「冗談言うな。向こうのガキがどうなろうと、俺の知ったこっちゃねぇ」
「報酬を出してもいい。ともかく頼む!」
ゼロールさんが食い下がったけれど、お兄さんは知らん顔だった。
「俺は金で買われるほど、安かねぇよ」
――どうしよう。
ここに住んでいないあたしたちだけじゃ、どの道がどこへつながっているかもよく分からない。
けど、早くしないと……。
「おい、ルーフェイア、いいから行くぞ!」
「でも!」
と、おばさんが動いた。
いきなりごちっと音がするほどの勢いで、またお兄さんの頭を殴りつける。
「このバカったれ! ちゃっちゃと行ってあの子助けといで!!」
「けどよ、お袋……」
「けどもくそもあるかい! あたしゃンな子に育てた覚えはないよ。
ここで行かないってんだったら、さっさとこの家も出ていきなっ!」
すごい剣幕で叱りつける。
これにはお兄さんも、逆らえないみたいだった。
「ちっ、わかったよ」
ダグさんと、ゼロールさんも立ち上がる。
あたしもすぐ後ろについた。
「いいかい、ダグ。手抜いたら夕メシ抜きだかんね!」
「でもルーちゃんたちのご飯は、とっとくからね〜」
声援(?)が後ろから聞こえる。
「どんくらい前の話だ?」
「ほんとにダグさんが、帰ってくる直前で……」
アパートの階段を降りながら答えた。
「真っ直ぐ帰ってればともかく、寄り道でもしてたらやばいぞ」
「ともかく、探さないと!」
「っても、どこを探せばいいんだ?」
ゼロールさんが考え込む。
「ダグさん、分かりませんか?」
「ムチャ言うな。よそのガキがどこ歩くかなんざ、天気予報より難しいぜ」
「そうですけど……」
でも早くしないと、何が起こるか分からない。
その時、なぜかやり取りに加わってなかったイマドが、悔しそうに言った。
「ちきしょう、居場所はわかったけど場所がわかんねぇ!」
「――イマド?」
どこかあたしたちとは違う彼は、ウィンのいる場所がわかってるみたいだった。