Episode:46
「いやまさか、ここが君の自宅とはね。
知らずにあがらせてもらったけど、おかげで事態が変えられそうだよ」
「あんたと話すことなんざねぇっ!」
――なにがどうなってるんだろう?
イマドもゼロールさんも、何か考えがあるらしいけど、それが何なのかがまったく分からない。そもそも、こんな騒ぎになってしまった原因さえ、分からないくらいだ。
かといってこんなに取りこんでたら、聞こうにも聞けないし……。
「なに考えこんでんの?」
「あ、オリアさん」
またお姉さんが気が付いて、声をかけてくれた。
「その、どうしてみんなが騒いでるか、分からなくて……」
「へ?」
お姉さんがおかしな声を出す。
「あんたさ、なんにも知らなかったの?
――まさか、兄貴が誰かもしらないとか?」
「はい」
オリアさんが頭をかかえた。
どうもあたし、またおかしなことを言ったらしい。
「あの、大丈夫ですか?」
「あ、うん、大丈夫大丈夫。
――兄貴兄貴、ストップ。この子ね、兄貴が誰か知らないんだって」
「は?」
こんどはお兄さんが、おかしな声を出して動かなくなった。
「マジかよ」
「マジらしいよ」
そのまま沈黙が降りる。
少しあって、お兄さんがやっと口を開いた。
「――ホントに知らないんだな?」
「あの……記憶違いじゃなければ、お名前もうかがってないんですけど……」
再び沈黙が降りる。
おばさんがひとり爆笑した。
「ほらみろ、だから言っただろう? この子はそんな悪い子じゃないよ」
「みてぇだな」
頭をかきながら、お兄さんも座りこむ。
「まぁなんだ、その……ようは俺は、殺し専門のチームのトップなんだ」
「そうなんですか」
よくわからないけれど、トップと言うことは……。
「偉いんですね」
「おい、それは違うだろ……」
「そうなの?」
――なにかのグループとかのトップっていうのは、偉くないんだろうか?
首をかしげていると、ゼロールさんが真ん中へ出てきた。
「ようするに、ここにいる彼が、祭りの片方のトップなんだよ」
「じゃぁ、シーモアたちが戦おうとしてる……相手、なんですか?」
「そういうこと」
この言葉にやっと納得する。
抗争を控えたチームのトップなら、自分だけじゃなくて、家族まで巻き込まれる可能性がある。
だから見知らぬあたしたちがあがりこんでるのを見て、とっさにあんなことになってしまったんだろう。
「すみません。そんなこと知らずに、上がりこんだりして……すぐ帰りますから」
「え? あ、いや、もう今更だからかまわねぇよ。
ほら、座んな」
帰りかけたあたしを、お兄さんが引き止めてくれた。