Episode:40 団欒
◇Rufeir
向こうの部屋から、縫製機の音が聞こえる。
なんでもここのおばさんとお姉さんが2人がかりで服を縫って、そのお金で家族みんなが暮らしているんだそうだ。
けど多分……それでも楽じゃないんだろう。狭い家と質素な室内を見れば、おおよそのことはわかる。
ただおばさんは、とてもいい人だった。
あたしがあれほどのことをしたっていうのに、親切に家へあげてくれて、昼食までご馳走してくれたのだから。
でも昼食そのものは、いつのまにかイマドが作ったらしい。
――イマドって、どうしてこうそつがないんだろう?
彼は誰とでも上手にやれる。
今ももう、おばさんやここのお姉さんの信頼を勝ち取ってしまったようだった。
「ホント、すまないね、洗い物までしてもらっちまって。
けどなんだってあんたたち、ここへ来たんだい?」
一段落してその辺に座っているイマドに、ジャスおばさんが尋ねる。
ちらっとこっちを見た彼に、あたしはうなずいた。こういう込み入った話は、イマドのほうがずっと上手い。
「さっきもウィンがちょっと言ってましたけど、友達追っかけてきたんですよ」
「俺は取材中に、この子たちと一緒になったもんですから」
イマドに次いで答えたゼロールさんの言葉に、おばさんの顔が険しくなった。
「取材ならお断りだよ」
「いや、俺が用事なのは、この子たちですから。用が済んだら帰りますよ」
「そうかい、それならいいけどね……」
おばさんが納得(?)する。
ゼロールさんがなにも聞こうとしなかったから、信用したのかもしれない。
「ともかくあんた、ヘンなマネはするんじゃないよ。
で、お嬢ちゃんたち、友達ってのは誰なんだい?」
一瞬イマドが黙った。どう言えばいちばんいいのか、考えているんだろう。
「ここじゃ有名かもしれませんね。
――まぁ友達です。ただ今度祭りがどうとかってここへ戻ったもんだから、さすがに心配で」
何か意図があるんだろう、シーモアたちの名前は出さない。
ただ、それだけでおばさんは、およその事はわかったみたいだった。
「祭りって……そうか、そういうことなのかい。それにしても驚いたね、あいつらに絡もうなんて」
「ほんと、それ命知らずって言うよ」
お姉さんまでがそう言う。
「でも、友達だから……」
気が付いた時にはあたし、もうそう言っていた。
危険なのは、さすがのあたしでも分かる。けどだからこそ、放ってなんかおけなかった。
こらえようと思ったけれどやっぱりだめで、また涙があふれてくる。
「大事な、友達なんです……」
しん、と部屋が静まり返った。小さな子供たちまでが口をつぐむ。
「――世の中、まだあんたみたいな子もいるんだねぇ」
おばさんの大きな手が、あたしの頭を撫でた。
「ほら、そんなに泣くんじゃないよ。
それとその話だったらね、あたしも心当たりがある。夜まで待てるかい?」
「え? あ、はい……」
別になにか予定があるわけじゃない。
いちおうイマドの方を見たけれど、彼も別に止めない。
あたしはうなずいた。