表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/131

Episode:40 団欒

◇Rufeir

 向こうの部屋から、縫製機の音が聞こえる。

 なんでもここのおばさんとお姉さんが2人がかりで服を縫って、そのお金で家族みんなが暮らしているんだそうだ。


 けど多分……それでも楽じゃないんだろう。狭い家と質素な室内を見れば、おおよそのことはわかる。

 ただおばさんは、とてもいい人だった。

 あたしがあれほどのことをしたっていうのに、親切に家へあげてくれて、昼食までご馳走してくれたのだから。


 でも昼食そのものは、いつのまにかイマドが作ったらしい。

――イマドって、どうしてこうそつがないんだろう?

 彼は誰とでも上手にやれる。

 今ももう、おばさんやここのお姉さんの信頼を勝ち取ってしまったようだった。


「ホント、すまないね、洗い物までしてもらっちまって。

 けどなんだってあんたたち、ここへ来たんだい?」

 一段落してその辺に座っているイマドに、ジャスおばさんが尋ねる。

 ちらっとこっちを見た彼に、あたしはうなずいた。こういう込み入った話は、イマドのほうがずっと上手い。


「さっきもウィンがちょっと言ってましたけど、友達追っかけてきたんですよ」

「俺は取材中に、この子たちと一緒になったもんですから」

 イマドに次いで答えたゼロールさんの言葉に、おばさんの顔が険しくなった。


「取材ならお断りだよ」

「いや、俺が用事なのは、この子たちですから。用が済んだら帰りますよ」

「そうかい、それならいいけどね……」

 おばさんが納得(?)する。

 ゼロールさんがなにも聞こうとしなかったから、信用したのかもしれない。


「ともかくあんた、ヘンなマネはするんじゃないよ。

 で、お嬢ちゃんたち、友達ってのは誰なんだい?」

 一瞬イマドが黙った。どう言えばいちばんいいのか、考えているんだろう。


「ここじゃ有名かもしれませんね。

――まぁ友達です。ただ今度祭りがどうとかってここへ戻ったもんだから、さすがに心配で」

 何か意図があるんだろう、シーモアたちの名前は出さない。

 ただ、それだけでおばさんは、およその事はわかったみたいだった。


「祭りって……そうか、そういうことなのかい。それにしても驚いたね、あいつらに絡もうなんて」

「ほんと、それ命知らずって言うよ」

 お姉さんまでがそう言う。


「でも、友達だから……」

 気が付いた時にはあたし、もうそう言っていた。

 危険なのは、さすがのあたしでも分かる。けどだからこそ、放ってなんかおけなかった。

 こらえようと思ったけれどやっぱりだめで、また涙があふれてくる。


「大事な、友達なんです……」

 しん、と部屋が静まり返った。小さな子供たちまでが口をつぐむ。

「――世の中、まだあんたみたいな子もいるんだねぇ」

 おばさんの大きな手が、あたしの頭を撫でた。


「ほら、そんなに泣くんじゃないよ。

 それとその話だったらね、あたしも心当たりがある。夜まで待てるかい?」

「え? あ、はい……」


 別になにか予定があるわけじゃない。

 いちおうイマドの方を見たけれど、彼も別に止めない。

 あたしはうなずいた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ