Episode:04
断られるんじゃないかと思ったけれど、意外にもすんなり繋いでもらえた。
通話石の向こうの声が変わる。
「どうしましたか? あなたがわざわざ連絡してくるんですから、なにかあったんでしょうが」
「えぇと、ケンディク駅で銃撃戦に遭遇して、とりあえず鎮圧したんですけれど……どうも双方わけありらしくて、イマドが学院へ連れていった方がいいって言うもんですから、それで……」
我ながら説明になってない。
もっともあたし自身学院へ連れて行く理由を聞いていないから、当然かもしれないけれど。
「その年で『銃撃戦を鎮圧』などとさらっと言えるのは、あまりいないでしょうねぇ。
いいですよ、イマドがそう言ったのなら連れて来なさい。迎えをやりましょうか?」
驚いたことにあっさり許可が下りた。
「すみません。怪我人と小さい子がいるので、そうしていただけると助かります」
「分かりました。すぐに向かわせますから、そのまま待機していなさい」
「了解しました」
それだけ言って連絡を終える。
現場へ戻ると、もう襲撃者も怪我をした少年も移された後だった。ホームに残る血の跡を、駅員が洗い流している。
「あの、すみません。学院の者なんですけど、イマド――じゃない、友達はどこに行ったんでしょう?」
尋ねると、その駅員が半歩ほど後ずさった。
なんだか妙に怯えられている。
「えっと、あの……?」
――太刀が抜き身なの、まずかったかな?
「え、あ、いや、学院ね。その、友達なら控え室、だよ」
「ありがとうございます」
お礼を言って、指差してくれた方へ向かった。確かに「控え室」の文字がある。
ドアを開けて中へ入ると、武装解除されて手を縛られた襲撃者と、それを見張るイマドとがいた。
撃たれた少年はソファに寝かされて、心配そうに子供たちが覗きこんでいる。
「学院長、なんだって?」
「迎えをよこすから、待機してるようにって」
そう言いながらイマドの隣へ行く。と、今度は子供たちが不安げに身じろぎした。
――あ、いけない。
慌てて太刀を鞘に収める。
「けど、駅員さんたちに、なんて……言ったの?」
どう言い繕ったのかが不思議で、尋ねてみる。
「別に。『学院の任務に関係することだから』ったら、すぐ納得してくれたぜ」
「任務って……あたしたち、傭兵隊じゃないけど……」
「どうせそこまで考えやしねぇよ」
これでいいんだろうか?
でも代わりに訂正なんて、あたしに出来そうになくて、とりあえずそのままにしておくことにする。
合計7人を、港から学院の連絡船に乗せて戻ったのは、それからしばらくしてからだった。