Episode:39
◇Nattiess
「ねぇ、シーモア。ウィン遅くない?」
「きっと、どっか寄り道でもしてんじゃないのかい」
鈍いんだか鋭いんだかわかんないルーフェイアを、あたしたちが追い返したあとの話。
「うーん、やっぱりそうかな?」
でもウィンが拾われたのって、あたしたちが学院行くちょこっと前だから、いまいちよく知らなかったり。
「きっとそうだと思うね。けどまぁ、ルーフェイアたちが帰ってよかったよ」
「そっかなぁ……?」
シーモアはそう言うけど、あたしはなんか腑に落ちなくて。
――だって、絶対おかしいもの。
見かけはともかく、イマドって中身は思いっきり食えないヤツ。
あの好青年ぶりに騙されたら最後、ヒドイめに会うの間違いなしだもの。
「あいつがあんなにあっさり引き下がるなんて、絶対裏になんかありそうじゃない?」
「そう言われると、そんな気もするけどね。
でもあいつだって、ルーフェイアを巻き込みたくはないと思うよ」
「それもどうかなぁ……?」
確かにイマドは巻きこみたくないだろうけど、なにせルーフェイアだもん。
あれで案外あの子、強情だったりするし。なんかいろいろ、ワケわかんない関係者いるらしいし。
あの子のこと、あたしたちいまでも、あんまりよく知らない。
でもアヴァンへ任務で行った時も、山ほどドレス用意したり、ともかく半端じゃないのよね。
「まぁどうだっていいさ。ここでやめるわけにはいかないんだ」
「そうだね」
伝言には詳しいことは書いてなかったんだけど、来てみてわかったの。
あたしたちも知ってるチームの小さい子、殺されちゃってた。
――許せないな!
殺ったのがどこかはわかってた。
こことテリトリーが重なるチーム。
それで今度祭り――ようは戦争のことなんだけど――するのに手不足で、あたしたちまで呼ばれたのよね。
「けどさぁ、久しぶりだよね〜」
「ああ。ちょっとワクワクするかな?」
学院ってば傭兵学校だけど、けっこう大人しいの。
そりゃもちろん普段の実地訓練なんかは厳しいけど、こんな風に血みどろになったりはしないもん。
「明日でいいんでしょ?」
「明日のちょうどお昼だね」
見ると部屋の中、みんな思い思いに武器の手入れとかしてるし。
昔とかわんない光景に、ちょっとほっとしたりして。
そうしてあたし、思いついたの。
「ねぇ、シーモア、街へ出ようよ!」
「街へ?」
「うん。せっかくだもん、ちょっとお金稼いでさ、今晩くらいみんなでぱぁっとやらない?」
あたしがそう言うと、シーモアも乗ってきて。
「いいね、それ。んじゃ行こうか……ってあんた、腕なまってんじゃないかい?
なにせ学院行ってからは、掏る機会もなかったろ?」
「だいじょうぶ、ちゃんと訓練はしてたの。それに今って記念日前でしょ? みんな気が緩んでるし。
あと内緒だけどね――時々やってた」
学院に知れたらおおごとだけど。
でもちゃんと、全部返してる。
「よし、あんたがそういうならだいじょぶだろうしね。久しぶりにやるか」
「うん。
そうそう、ついでにルーフェイアたちがどうしたか、探ってこようよ。それと連中のこともいっしょに♪」
「そうだね」
これで話しはキマリ。
リーダーのガルシィに断ってあたしたち、久しぶりに街へと出だしたの。