表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/131

Episode:36

「ひでぇなぁ。なにも泣かすことないだろうに」

「だから違うって言ってんだろ!

 ったく、ほらあんた、ちょっとこっちへおいで!」

 野次馬たちに騒がれて、さしものおばちゃんもキマリ悪くなったらしい。


「往来の真ん中で泣かれてちゃ、あたしが悪いみたいでたまんないじゃないか」

「おばちゃんが悪いんだろ?」

――ウィン、ナイス突っ込み。

 おばちゃんが一瞬黙る。


「分かった、分かったよ。あたしが悪かった!

 ともかくあんた、そのまま泣いてるわけにいかないだろ。とりあえずうち来て、落ちついてからお帰り。いいね?」

 俺がさして口を差し挟まないうちに、狙いどおりの方向へ事態が転がった。


「さ、おいで」

「あ、はい……」

 言われてまだ泣いてるものの、ルーフェイアのやつが素直にうなずく。

 おばちゃんがルーフェイアの腕を掴んで歩き出して、オリアと呼ばれた女性――たぶん10代後半――がすぐ後ろからついていった。


「お、おい、話が違うぞ?」

 ゼロールさんが慌てる。

 まぁ俺らをどっかの店へ連れてって深刻な話するつもりだったわけだから、しょうがないんだろうけど。


「俺はあいつと一緒にいます。それにこのほうが、早く事態が片付きますから」

「――? どういうことだ?」

「知りたかったら、一緒に来たらどうです?」


 俺の言葉に一瞬だけこの人は考えて、ついてきた。いくらか距離のあいたルーフェイアたちを、追いかける。

 おばちゃんの家とやらはすぐそこだった。半分壊れかけたアパートの、3階のすみっこだ。

 気配を察したのか、隣近所のドアが開く。


「あんた、大丈夫だったのかい? 外で騒いでたみたいだけどさ」

「ああ、この子たちがちょいと助けてくれてね」

「ほらっ、預かってた子たち返すよ」


 ぞろぞろとガキが出てきた。全部おばちゃんの子供らしい。

――って、ずいぶんいるな。

 あのオリアって人もいれると、8人兄弟ってことになるだろう。


「狭くて悪いけどね。まぁ通りの真ん中よりマシだろうよ」

「すみません……」

 まだ泣きながらルーフェイアのやつが謝る。


「いや……いいのさ」

 不意におばちゃんのトーンが、もう一段下がった。

 自宅のドアを開けて中を見てる。


「――そうだね。あんたが助けてくれなきゃ、サイアクこの部屋へだって戻れなかったんだ」

 どうも戻ってきて事態を実感したらしい。

 最初っから気がつけって気もするけど。


「さっきは頭に血が上ってたから、怒鳴りつけたりしたけど……お嬢ちゃん、ありがとう」

「いえ……」

 ルーフェイアがやっと顔を上げた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ