Episode:33
「お嬢ちゃん、正気か?」
取り立て屋の男も呆れかえってる。
けどルーフェイアの方は真剣だ。
「正気よ。さぁ、どうなの」
あの調子だと「ダメだ」なんて言おうもんなら、即座に切りかかりそうだ。
しばしの間。
「ふぅ、やっと追い付いた」
「あ、ゼロールさん」
「――妙なところで出てこないでくださいよ」
ジャーナリストのゼロールさんが、ぜぇぜぇ言いながら今ごろ現れた。
「そうは言ってもみんなめちゃくちゃ足速くてな……運動不足にゃキツいよ」
「あの、大丈夫ですか?」
「年だとか」
ルーフェイアのやつは単純に心配してるけど、俺はそこまで素直じゃない。だいいちまだオヤジってわけでもないのにこれじゃ、はっきり言って情けないってやつだ。
「ガキのくせに生意気だな」
「オヤジになると、みんなそう言いますよ」
「君なぁ……」
俺に切り返されて、この人が困って頭を掻く。
「イマド、そんなこと言ったら……」
と、別のほうからも声がかかった。
「お〜い、もしも〜し?」
「へ?
あ、すみません」
――そういや借金取りと、やりあってる最中だったな。
見れば連中、会話から取り残されて困りきった顔をしてる。
「えーと、なんの話でしたっけ」
「立てかえる話だったかな?」
「あ、それそれ」
ようやく話が元へ戻った。
「なんの話なんだ?」
そこへまたゼロールさんが口を挟む。
「あとで説明します。話がこじれるから、黙っててもらえませんか?」
って言うか、もう十分こじれてる気はするんだよな……。
でもとりあえず、この人が黙ってくれた。
「ともかく、この紅玉でどうにかしてもらえますよね?」
借金取りに確認する。
「ああ。こっちだってまぁ、とりあえずお金が入りゃいいわけだしな。
おい、おめぇら、戻るぞ」
取り立て屋が引き上げて、周囲の空気が緩んだ。
「やれやれ、これで一段落だな」
「みんな、ごめんね。寄り道しちゃって……」
「……そう来るか」
ある程度ズレた台詞が来るのは予想はしてたけど、まさか「寄り道」って言うとは思わなかった。
「――ねぇちゃん、マジ金持ち?」
いつの間にやらそばへ来たウィンが、呆然とつぶやく。
「いわゆる金持ちとは、ちょっと違うけどな」
「ちょっともなにも、金持ちに種類なんてあるのかい?」
ワケわかんないツッコミを、ゼロールさんがする。