Episode:03
2人で一瞬だけ視線を交わして、左右に散る。
まず、一気にイマドが突っ込んだ。向こうが撃ってくる弾は魔法で弾き返せるから、まったく躊躇いが無い。
同時に襲っている3人の少年の手元でそれぞれ、威力こそ弱いものの電撃が炸裂する。こういう襲撃者なら大抵持っている魔力石を、イマドが暴発させたんだろう。
予想外の事態に驚いている少年の一人に、彼はあっという間に詰め寄った。
――速い!
精霊の支援を受けてるならともかく、素のままとはとても思えないスピードだ。
そして次の瞬間には、剣の柄を敵のみぞおちに叩き込んでいた。
この間にあたしも一人を峰打ちで昏倒させる。
一瞬にして残るはあとひとり。
その残った襲撃者に、あたしの太刀とイマドの剣との切っ先が、左右から喉元へと突きつけられた。
「あ、うあ……」
さすがに少年(?)がパニックを起こす。
「武器を捨てろ」
イマドが鋭くそう言うと、彼は素直に従った。
「ルーフェイア!」
「分かってる」
すぐに、襲われて倒れている少年の方へと向かう。
傷を調べると肩に一発当たっているだけで、それも幸い貫通していた。
簡単な回復魔法をかけると、あっさりと出血が止まる。
「お兄ちゃん、大丈夫なの?」
「うん、大丈夫よ」
連れられて来たらしい子供たち――5、6歳の子供が3人ほど――に、そう答えて安心させる。
「待ってて。すぐ病院に」
「……ダメ、だ」
「え?」
思ってもみなかった言葉に驚いた。気を失っているとばかり思っていた、この怪我をした少年が、そうはっきりと口にしたのだ。
「どうしたんだよ?」
もたついてるあたしに、イマドが声をかける。
「イマド、それがね……病院、ダメだって……」
「なんだよ、それ?」
言いながら彼はこっちへ来て――襲撃者はもう柱に縛り付けてあった――少年の瞳を覗き込む。
「――そういうことか。しゃぁねぇな、とりあえずこいつらまとめて、学院連れてくか。
ルーフェイア、お前学院長に連絡してきてくれ。俺はこっち、適当にごまかしとく」
「あ、うん。分かった」
いまいち事態が飲み込めなかったけれど、とりあえず連絡しに行った。イマドは時々、こうやって誰も何も言わないのに、真相を知ってしまうことがある。
「――お忙しいところ申し訳ありません。あの、6年Aクラスの、ルーフェイア=グレイスです。えっと、学院長に……つないでもらえますか?」