Episode:27
◇Seamore
――ったく、まいったね。
正直それが、いちばんの感想だ。
まさかチビどもとすれ違った挙句に、この騒ぎをルーフェイアに知られちまうなんて。
ルーフェイアは優しい。そのうえ人のこととなると、自分のことなんざお構いなしに助けに入る性格だ。
だから何も言わずにおいたってのに、偶然チビどもを保護したのがこいつだったもんだから、いろいろ知られちまった。
で、この騒ぎだ。
なんせ海越えて大陸を半分横断して、追いかけてくるってんだからハンパじゃない。お人好しにもホドがある。
「けど、もしも、もしも……シーモアたちが……」
ここまで来た上、そう言って目の前でぽろぽろ涙こぼして泣いてちゃぁ、さすがに冷たくできなかった。
成り行きとはいえ、2人をアジトに入れたケインに、文句言いたいとこだ。
「――わかった。帰るわけにはいかないけど、そのワケ話すよ。
ともかくそれで勘弁してもらえないか?」
ついそんな言葉が口をついちまう。ホントは部外者にこういうこと言うのはご法度だけど、まぁ理由が理由だから、リーダーのガルシィも許してくれるだろう。
「理由……?」
びっくりしたのか、ルーフェイアのやつが顔を上げた。
「ああ。
ただ約束してくれないか? これ聞いたあとは、あたしらに干渉しないってね」
「………」
あ〜、そんな顔するなって!
困り果てた上目使いされちゃ、自分がエラく悪いことしてる気分になっちまう。
けど幸いこの子が尋ねた先は別で、一緒に来たイマドの方を振り向いた。
ルーフェイアの視線を受けた彼氏が頷くのを見て、マジでほっとする。大人しい性格のルーフェイアは、イマドの言うことに逆らったりしない。
「O.K.分かったみたいだし、話すよ。
ま、そうは言ってもざっとだけどさ。そもそも言うこと自体、掟破りだしね」
そう言ってあたしは話し出した。
このシティ内のスラムは、なにせ治安が悪いので有名だ。だから当然、国だかが勝手に決めた法律なんざ、守られちゃいない。
ただ、完全な無法地帯ってわけじゃなかった。なんにも知らない外の連中はそんなこと言ってるけど、スラムにはスラムのキマリってのがある。
例えば上下関係なんかは、外の連中が思う以上にしっかりしてる。
まずクリアゾンって呼ばれる大人の一団があって、その下にあたしらみたいな未成年の集団、さらに下にチビガキの集団。かなりの数のグループがあるけど、専門にしてるコトなんかで、ぜんぶ細かく立ち位置やナワバリが決まってた。
他にもいろいろ、細かい「暗黙の了解」ってやつもある。
あたしらのところは本職は殺しだけど、依頼が来ないかぎりは手出さないし、関係ないやつは絶対に巻き込まない。かっぱらいやってるようなグループならともかく、ある程度以上はみんな、一定の不文律を守ってる。
逆に言えばこうだからこそ、あたしらも追い出されたりチクられたりせずに、ここに腰を据えてられるってワケだ。
とは言え、普通じゃ信じらんないような話も、ここにゃ多いけど。