Episode:20 古巣
◇Nattiess
学院出てから7日目の朝イチ、あたしたちやっと古巣へ辿り着いたの。
けど久しぶりに来たスラム、変わってなかった。
お金ないから高速艇とか特急使えなくて、時間かかっちゃったけど、これだけでも来た甲斐あったかな?
――あいかわらずきったないなぁ。
でもその薄汚れた街並み、キライじゃないの。
あの頃……悪ガキしてたあたしのこと受け入れてくれたの、ここだけだもん。
「なに考えてんのさ」
「ん? 昔のこと」
訊いてきたシーモアにあたし、ちゃんとそう答えた。
だって別に、隠すようなことじゃないから。
なにしろシーモア、あたしのこと全部知ってる。
「なんだおめぇら、しばらく見なかったなぁ。お、シーモア、デカくなったじゃねぇか」
耳に馴染む、独特のスラング。
あたしってばそんなにここに長くいなかったから上手く使いこなせないけど、聞くほうは慣れてるのよね。
「おっさん、触るんじゃないよ。金取るぞ」
「ちっ、手厳しいなぁ」
絡んできた知り合い――って言っていいのかな?――の酔っ払いオヤジを、シーモアったら軽くかわすし。
ほかにも声をかけてくる人、何人かいたり。
スラムっていわゆる都会と違って、けっこう人の結びつきは強いの。
みんな大変だけど、助け合ってやってる。
ワルさするのは多いけど、それは黙認。
だってこの街、正規軍の兵士やら警察なんかがウサ晴らしに、来ては酷いことしてくんだもん。
もしなにかシティで犯罪があったら、必ずここの誰かが犯人に仕立て上げられちゃうし。
そのうえここの住人だってわかろうもんなら、繁華街の店とかどこも、売るの嫌がったりするのよね。
けど、どこが違うのかな?
あたし別にここの生まれじゃないし、ここから他の町へ行って成功して、シティで下にもおかない扱い受けてる人もいるし。
ホント、世の中ってどうかしてるよね。腹たつな。
大人っていったいどこ見てんだか、あたしにはちっともわかんない。
と、すれ違い様に誰かがぶつかってきた。
「っと、アンタらどこ見てんのさ! こっちの上等な服が――」
「あたしに向かってカモるなんざ、いい度胸じゃん、ミハーナ」
「え?
――シーモア?!」
このスラムにはよくいるこの手合いだけど、彼女はシーモアの知り合いだったみたい。
ただ、あたしは知らなかった。