Episode:02
「そりゃ下手とは言わないけどよ、妙にアテにされるのも考えもんだぜ」
普通じゃあんまり聞けないようなぼやきに、つい可笑しくなる。
「けど、そう言う割に手抜き……しないから」
「そゆのはプライドゆるさね〜」
結局凝り性なのが、災いしてるらしい。
「まぁいいや。とりあえずヒマだから、なんか作ってやるよ。リクエストあるか?」
「ケーキ♪」
「――イヤミか、それ? 俺じゃシルファ先輩みたいにはいかねーぜ、それだけは」
「でも、イマドのも、おいしいから」
シルファ先輩も、いま学院にいなかった。タシュア先輩と一緒に、どこかへ行ってしまったらしい。
「んじゃそこらで昼メシ食ってから、晩メシとケーキの材料だけ買ってくか」
「うん」
けっきょく食事をしたあと、町の一角、食料品やなにかを売っている店がひしめいている、市場へ行く事にする。
「で、なんのケーキがいいんだよ?」
「そう言われても……」
とっさには思い浮かばない。
「白いの、この間シルファ先輩に、作ってもらったし……生オレンジとか、ダメ?」
「そりゃムリだな。時期じゃねぇから。しゃぁねぇ、適当に作るぞ?」
「ありがと」
そんな話をしながら、駅前の広場を横切っていく。
結構な広さの円形の広場は、綺麗に石畳が敷かれていて、周囲には洒落たベンチが幾つも置いてあった。
小春日和のせいか、けっこうたくさんの人で賑わっている。
「こんど昼メシでも持ってきて、ここらで食うか? あとは埠頭の方とか」
「あ、いいかも」
ちょうど駅に列車が着いたところらしくて、たくさんの人たちが階段を降りてきていた。
そこへ突然、銃声が響く。
「――行くぞ!」
「うん」
とっさに走り出した。
騒ぎの起きた駅から慌てて逃げてくる人々の中を、うまく逆走する。そして駅員さんには悪いけれど、そのまま改札を飛び越えて構内へと飛びこんだ。
――あとで入場料、払った方がいいのかな?
そう思いながらもとりあえず、自分とイマドとに防御魔法だけはかける。
「あれか? けどなんなんだよ?!」
イマドが言うのももっともだった。なにしろなにかの劇映みたいに、構内で銃撃戦が展開されてるのだから。
ただ良く見ると、襲われてるうち応戦しているのはひとりだけで、3人ほどを相手にしている。
しかも襲っているのはあたしたちよりほんの少し年上、襲われている方にいたっては、あたしたちとさほど変わらないか、中にはもっと小さい子までいた。
再び銃声がして、応戦していた少年が倒れる。このままじゃもっと小さい子達までが、犠牲になりかねない。