Episode:18
「その……ンな理由でさ、それもスラムの外で育ったヤツが来てくれるなんて、オイラ考えたこともなかったんだ。
――姉ちゃんたち、すっげぇいい人なんだね」
「そんなことないわ」
間髪いれずにルーフェイアのヤツが否定したけど、説得力はゼロだ。俺はともかく、コイツの人の好さは並外れてる。
「ま、そゆやつもいるってことさ」
俺の言葉に、何度もガキが頷いた。
それから、いちばん肝心な事を思い出す。
「そういやお前、名前なんてんだ?」
「え? あ、そか、言ってなかったっけ。オイラ、ウィンってんだ」
胸を張って答えたガキに、ルーフェイアのヤツが返す。
「いい、名前だね」
「え、それほどでも……」
耳まで赤くなってるあたり、ルーフェイアの美少女ぶりにアテられたんだろう。けっこうマセたガキだ。
「とりあえずお前、シャワーでも浴びてこいよ。その頭だと、ずっと身体洗ってねーだろ」
「え……」
ガキがあとずさった。
「オイラ、そういうのはさ、えーと別に、死なないからいいじゃん」
「入ってこい。じゃないと、甲板から海に捨てっぞ」
髪に虫でもつけてそうなヤツと、同室はさすがに願い下げだ。
「ウィンくん……入ったほうが、いいよ。
んと、そしたらあたしが、洗って……あげようか?」
「いいっ! オイラひとりで入るっ!」
ルーフェイアの「親切」に、ガキが身を翻してシャワー室へ駆け込んだ。さすがに素っ裸を女子に見せるのは、ヤなんだろう。
「他人が洗ったほうが、きれいになるのに……」
さすがにここまでくると、ガキが可哀想になる。
「やらせとけよ。つかさ、学院のガキならあの年なら、だいたいの事はひとりでやるぜ?」
「あ、そっか」
やっと納得したらしい。
俺はソファに腰掛けた。
「ともかく一段落だな。ったく朝っぱらから、大騒ぎだったぜ」
「そうだね」
コイツの相手しながら、さてどうしたもんかと考える。
ただあのウィンってガキ、やり方によっちゃ役に立つかもしんない。なんせ出身がスラムだ。これ以上の案内役はいねぇだろう。
と、ここに襲った連中の仲間が居ないかって訊かれた気がして、俺は答えた。
「あ、それはねぇと思うぜ。俺らがとっ捕まえた連中で、全部だったからな」
「え?」
ルーフェイアのヤツの、驚いた顔。
――やべぇ。
久しぶりに、血の気が引いた。
一部の家系には時々、念話が出来るヤツが出る。で、詳しい事は分かんねぇけど、俺のお袋がこの家系だったらしい。
それを継いじまったのか、俺も同じことが出来た。
っても、相手もそういうヤツじゃなきゃ話できねぇし、ふだんも稀に、相手の考えてる事が聞こえるくらいだ。
ただ、この手の能力はものすごく嫌われる。
だからいつも、かなり気を付けてたワケだけど……ボケっとしてたせいでルーフェイアが「言ったこと」じゃなくて、「考えてる事」を聞いちまったっぽかった。