Episode:17
部屋の鍵を開けて、ガキを中へ入れる。
「すげぇ部屋……」
育ったとこがアレだから、こんなの見んの始めてなんだろう。つか、俺だって見たことなかったし。
「けどイマド、どうしよう……?」
心配そうに言うルーフェイアに、俺は答えた。
「連れてこうぜ」
「え、でも、危ないんじゃ……」
ベルデナードに何が待ってるのか、さすがに分かってんだろう。心配性のコイツが、思ったとおりのことを言う。
「同じだって」
答えると、不思議そうな表情になった。だから説明する。
「学院抜け出して来やがったんだ、返したところでまた逃げ出すのがオチだろ。
だったら俺らで見張ってたほうがいいって」
「……そっか」
今回は俺らが居たからよかったけど、次はそうは行かない。うっかり無賃を咎められたら、大騒ぎだ。
それにこのガキは忘れてんのかもしんねぇけど、昨日は襲われてたくらいだ。学院の外じゃどうやっても、安全とは言えなかった。
「オイラ、そんなチビ竜みたいに、ちょこまかしてないよ」
「十分してるっての」
なんか気に触ったのか、口を尖らせたコイツに言い返す。だいたい勝手に抜け出しておいて、ずいぶんな言い草だ。
「ともかく俺らと一緒にいろって。ひとりでウロついてるとロクなことねぇぞ」
「冗談じゃないって! オイラ帰るんだ」
「だから、帰りゃいいだろ」
言ってから、気がつく。微妙に話が噛み合ってない。他の2人も気づいたらしくて、思わずみんなで沈黙する。
「あー、だからさ、俺らが行くのはお前がいたスラムなんだよ。
だから一緒に来いっての」
「え、そうだったんだ!」
やっと話が繋がった。
けどこのガキが、急に警戒した表情になる。
「どうした?」
「なんで、そこ行くのさ」
俺らを「よそ者」として、疑ってる瞳をしやがる。
――まぁ、しゃぁねぇか。
もともと俺ら、全くスラムには関係ねぇし。
同じ事感じたんだろう、ルーフェイアのヤツが視線を落とした。
その瞳に、涙が浮かぶ。
「……いきなり泣かせてどーすんだよ」
「え、あ、その、えっと、オイラそいういうつもりじゃ……姉ちゃん、ごめんよ、ごめんったら!!」
生意気なこのガキも、これには驚いたんだろう、慌ててなだめた。
てか、年下に慰められるって、なんか微妙に間違ってる。
「ううん、いいの。だってあたしたち……ほんとは関係ないから……」
部外者が乗り込むってことの意味を、意外にもルーフェイアのヤツ、分かってるらしい。それを指摘されたのと、でも行きたいのとで、板ばさみで泣いたっぽかった。
つかコイツ、言い返す代わりに泣くし。
「けど、けど……シーモアもナティエスも、友達だから……」
「姉ちゃん、オイラが悪かった。ごめん、謝る」
あっさり、ガキが謝った。もちっと生意気だと思ってたから、これには俺も驚く。
ルーフェイアのヤツも驚いたらしくて、泣くのを忘れてガキを見た。