Episode:16
「――兄ちゃん、ありがと」
「ん? 気にすんなって。だいいち途中で放り出されたらお前、どうにもならねぇだろ。
それよりとりあえず食えよ。何か頼んでさ」
さすがに神妙な顔で礼を言ってきたガキに、そう返す。
「オイラさ……」
「ねぇ、どれにする?」
こいつが何か言いかけたけど、タイミングよくルーフェイアがメニューを出した。
「なんだこれ。これ見るとなんかあるのか?」
「え? 何ってその、メニューだけど……」
「メニュー?」
会話が成り立ってない。
「えっとね、ここにその、いろいろ料理が書いてあって……ここから選んで、頼むの」
ルーフェイアにしちゃ珍しく、的を射た説明だ。ただ、その先は予想以上だった。
「そのさ、オイラ字読めねぇから、姉ちゃん読んでくれよ」
「え? あ、ごめんね! えぇと……」
ルーフェイアのやつがメニューを読み上げ始める。
「姉ちゃん、それってどんな食いモン?」
「え……?」
――って、最悪の組み合せか?
ルーフェイアの方が知ってりゃまだともかく、双方で分かんねぇからまさにお手上げだ。このまま放っておいたら1日経ってもまだ、料理にありつけねぇだろう。
「――おい、適当に頼むぞ」
「あ、うん。兄ちゃんにまかせる」
さすがに見かねて、また俺が適当に頼む。
「イマド、ごめんね……」
「だから謝るなって。別にお前が悪いわけじゃねぇだろ。
ほら、さっさと食っちまえよ」
面倒を見る人数が増えて、妙に忙しい。
「ほら、お前もそこに突っ立ってんじゃねー。って、手汚ねぇな。洗ってこいよ」
「え? なんで手洗うのさ」
常識通じてねぇし。
けど幸い、バタついたのはそこまでだった。手洗わせて座らせて、メシが運ばれてきたあとは、2人とも大人しく食べ終える。
「でさ、兄ちゃん、オイラ……」
「ストップ。部屋戻ってからな」
言って俺は立ち上がった。
ただでさえさっきの騒ぎで注目浴びてるのに、んなヤバい話がここで出来る訳がない。
食べ終わった2人もついてくる。
――にしてもこいつ、どうするかな。
もっともワサールまでは降ろすワケにいかねぇから、問題はその後だ。
けどこの調子じゃ、ほっとくと何しでかすかわかんねぇし……。
けっきょく最後まで連れてくしかないだろうと思いつつ、俺は部屋へと向かった。