Episode:15
「その、すみません。こいつ俺たち追っかけて、勝手に乗っちゃったみたいで」
「あん?
それじゃ……キミの知り合いか? あ、それとも弟か?」
――勝手に誤解してやんの。
けど確かにこいつと俺、髪の色が割と似てる。
「俺らに置いてかれたのがヤで、来ちゃったんだと思うんです。
お騒がせしました」
とりあえず謝ってみた。
誤解の方は、面倒だから解かない。
「なるほど。まぁ気持ちはわからんでもないが……切符を持たないで乗るのはよくないな」
「すみません。
ただ思うんですけど、こいつ切符要るんですかね?」
幸いこのガキ、年より小さい。黙ってりゃせいぜい、5つくらいにしか見えねぇはずだ。
「ふむ、確かに……」
船員が言われて考えこんだ。
「そうだな。ひとりで乗ってたならともかく、連れがいるなら切符は要らんか」
っておい、いい大人がンな簡単に言いくるめられんなよ……。
内心かなり呆れたけど、ともかく顔には出さないようにする。
「あとはちゃんと、俺たちで面倒みますから」
「そうしなさい。ところでキミたち、もしかして学院の生徒なのかい? それに子供だけで、どこまで行くんだね?」
――めんどくさい質問するなって。
けど答えないと、もっと面倒だろう。
「確かに俺たち、学院の生徒です。あ、このチビは違いますけど。
で、ベルデナードーまで、ちょっと人に会いに……」
嘘は言ってない。
ただ無賃乗船の件が片付いて甘くなってきた船員、今度も勝手な解釈をした。
「そうか、あそこは孤児ばかりだと聞いていたが、君たちみたいに会いに行ける人がいる子もいるんだな。
ベルデナードーまではずいぶんかかるが、辛抱しなさい。それと何かあったら私に言うといい。ワサールまで、できる限りのことはするよ」
これでいいんだろか。
ガキだって時には爆弾抱えて突っ込んだりするんだし、もちっと他人を疑うってこと、覚えたほうがいいような。
ただ、面と向かってそうは言えない。
「すみません、ありがとうございます。
俺たちも大人なしでベルデナードーまで行くのは初めてなんで、そうしてもらえると助かります」
神妙な顔して、嘘スレスレを言ってみる。
もっとも相手が、どう取るかは知らねぇけど。
「そうかそうか。それにしても遠くまで大したもんだ。
ほら、立ってないで早く食べてしまいなさい。あとこの子にも、ちゃんと食べさせてやるようにな」
「はい」
結局船員は誤解しまくったまま、引き上げていった。
どうにか静かになったところで、食べるのを再開する。