Episode:130
「だとすると、この記事の犯人は彼かしらね?」
言いながらルーフェイアのお袋さんが、さっきから斜め読みしてた新聞――ウソみてぇだけど経済新聞だ――をひらひらさせた。
「なんの記事です?」
「あ、あなたたちじゃ見ても、わかんないと思うわよ」
確かに俺もざっと見てみたけど、魔力石の相場が上がったとか国境地帯で金属の採掘権がどうなったとか、ンな記事ばっかだ。
「教えてくれたっていいじゃないですか」
「別に知らなくたって、困りゃしないわよ。
――あら」
俺の言葉を軽く躱したお袋さんが、遠い下の広場を見ながら面白がるような声を出す。
「――げ、オイラ帰るっ★」
ウィンのやつも気が付いて、慌てて踵を返した。
「ちょっとウィン、どうしたの!
あぁもう、シーモア、どうしよう?」
さすがにうろたえながらナティエスのやつが訊くと、シーモアも呆れ半分苦笑半分で答えた。
「ウィンのヤツ、タシュア先輩でも見たんじゃないのかい?
けどこれ以上いてもしょうがないし、ルーフェイア、あたしらもそろそろ引き上げるよ」
「え、あ、うん……」
突然言われて、こいつが戸惑いながらもうなずく。
「ほら、そんな顔しなさんなって。どうせ年が明けりゃすぐ、学院で顔つきあわせるんじゃないか」
これで納得したんだろう。ルーフェイアのやつが淡い笑顔になった。
「そしたらシーモアもナティエスも、気をつけてね? 風邪なんかひかないでね?」
「大丈夫だって」
「もう、ルーフェイアったらほんと心配性なんだから。じゃぁね♪」
それから2人も、手を振りながら下りの自走階段のほうへ向かった。
徐々に姿が沈んで消える。
「行っちゃったね……」
「ま、どうせまたすぐ会うんだしな」
「――うん」
ちょっと笑顔になって、こいつがこっくりとうなずいた。
――これが可愛いんだよな。
確かに年より幼いだろうけど、ヒヨコよろしくくっついてくるこいつは、俺は嫌じゃなかった。
「で、お前はこれからどうすんだ?」
「えっと……?」
自分じゃ考えてなかったらしくて、ルーフェイアが困った顔して両親のほうを振り向く。
「どこか予定があるのか?」
「あら、ディアスかルーフェイアが考えてると思ったわ」
――おい。
親子3人でいたにも関わらず、誰も何も考えてなかったらしい。
この頼りない両親に、ルーフェイアのやつがため息をついた。
「――んじゃみんなで、アヴァン来ません?」
「え?」
ちょっと首をかしげて、不思議そうにこいつが俺を見返す。