表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/131

Episode:13

「ま、ワケはそのうちな。それよりメシ、来たみたいだぜ」

 言われて辺りを見回す。

「どこ……?」

 ずっと向こうの違うテーブルに、ウェイターがいるだけだ。


「あ、悪りぃ。でももう来るって」

「?」

 不思議に思う反面、たぶんそうなんだろう、とも思った。


 イマドは時々、こういうことをする。見えない位置にいたはずなのに知ってたり、次に起こる事が分かっているように動くのだ。

 そのせいでイマドが相手に模擬試合をすると、先読みされるしフェイントも見破られるしで、いつも大変だ。

 正直言って、身体に刷り込まれた条件反射とスピードがなかったら、負けてると思う。


 そんなことを考えてるうちに、イマドの言うとおり、すぐお皿が運ばれてきた。

 早速彼が食べ始める。

「……何の香草だ? 他にも変わったスパイス入れてんな」

 食べながら、何を入れたか考えてるらしかった。


 あたしも手を止めて、自分のお皿を見てみる。

――これ、なんだろう?

 魚なのは間違いないけど、分かるのはそれだけだ。

 もっとも食べられるんだから、あとはなんでもいい気がする。


「――なんか初めて見る野菜だな?」

 イマドは今度は、サラダをつつきながらぶつぶつ言っている。

 けど、あんな風に食べてて美味しいんだろうか……?


「なんだ? どうかしたか?」

「え? あ、なんでもない……」

 ぼうっとしていたら、さすがに変に思われたみたいだった。


「どうでもいいけど早く食ったらどうだ? 冷めちまうぜ」

「――うん」

 見ればイマドのほうはもう半分くらい片付いていた。あたしの倍以上頼んで、もうこれだけ食べてるんだから、かなりお腹が空いていたんだろう。

 と、今度は彼が手を止めた。


「どうしたの?」

「いや、ちょっと引っかかってさ」

「喉に? でもお肉に骨って……あった?」

「――ちがうって」


 どうも「引っかかった」違いだったらしい。

 ただイマドはそれ以上何も言わなかった。視線だけはあたしのほうを向いているけど、見ているものはまったく別のようだ。


「――ねぇ?」

「ったく、あのヤロ〜」

 いったい何のことか、さっぱり分からない。


「ごめん、なにがどうなっちゃってるの?」

「ちょっと後でな」

 そう言ってイマドが立ち上がった。

 一瞬戸惑ったけれど、すぐにあたしも理由を悟る。


 向こうのほうから怒声が聞こえていた。言葉から察するに、どうも密航した子供がいたらしい。

 騒ぎがこっちへ近づいてくる。

 食堂のドアを勢い良く開けて、追われている子供が駆けてきた。


――あの子は!


 間違いない。

 あの子は昨日ケンディクで……。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ