Episode:13
「ま、ワケはそのうちな。それよりメシ、来たみたいだぜ」
言われて辺りを見回す。
「どこ……?」
ずっと向こうの違うテーブルに、ウェイターがいるだけだ。
「あ、悪りぃ。でももう来るって」
「?」
不思議に思う反面、たぶんそうなんだろう、とも思った。
イマドは時々、こういうことをする。見えない位置にいたはずなのに知ってたり、次に起こる事が分かっているように動くのだ。
そのせいでイマドが相手に模擬試合をすると、先読みされるしフェイントも見破られるしで、いつも大変だ。
正直言って、身体に刷り込まれた条件反射とスピードがなかったら、負けてると思う。
そんなことを考えてるうちに、イマドの言うとおり、すぐお皿が運ばれてきた。
早速彼が食べ始める。
「……何の香草だ? 他にも変わったスパイス入れてんな」
食べながら、何を入れたか考えてるらしかった。
あたしも手を止めて、自分のお皿を見てみる。
――これ、なんだろう?
魚なのは間違いないけど、分かるのはそれだけだ。
もっとも食べられるんだから、あとはなんでもいい気がする。
「――なんか初めて見る野菜だな?」
イマドは今度は、サラダをつつきながらぶつぶつ言っている。
けど、あんな風に食べてて美味しいんだろうか……?
「なんだ? どうかしたか?」
「え? あ、なんでもない……」
ぼうっとしていたら、さすがに変に思われたみたいだった。
「どうでもいいけど早く食ったらどうだ? 冷めちまうぜ」
「――うん」
見ればイマドのほうはもう半分くらい片付いていた。あたしの倍以上頼んで、もうこれだけ食べてるんだから、かなりお腹が空いていたんだろう。
と、今度は彼が手を止めた。
「どうしたの?」
「いや、ちょっと引っかかってさ」
「喉に? でもお肉に骨って……あった?」
「――ちがうって」
どうも「引っかかった」違いだったらしい。
ただイマドはそれ以上何も言わなかった。視線だけはあたしのほうを向いているけど、見ているものはまったく別のようだ。
「――ねぇ?」
「ったく、あのヤロ〜」
いったい何のことか、さっぱり分からない。
「ごめん、なにがどうなっちゃってるの?」
「ちょっと後でな」
そう言ってイマドが立ち上がった。
一瞬戸惑ったけれど、すぐにあたしも理由を悟る。
向こうのほうから怒声が聞こえていた。言葉から察するに、どうも密航した子供がいたらしい。
騒ぎがこっちへ近づいてくる。
食堂のドアを勢い良く開けて、追われている子供が駆けてきた。
――あの子は!
間違いない。
あの子は昨日ケンディクで……。