Episode:128
「借り作っちまったね」
「ま、そのうち返してもらうぜ」
「そんなことより、今度みんなで遊びにいきましょ。あたしが全部面倒見てあげるから」
「母さん!」
ンなこと言いながら、俺らがワイワイやってた時だ。
「兄ちゃん、姉ちゃん!」
「あ、ウィン」
あのチビが半分息切らせながら、駅の自走階段を駆け上がってきた。
「もう、行っちゃうって聞いてさ。オイラ急いで来たんだ」
「ごめんね、疲れたでしょう?」
ルーフェイアのやつがそう言うと、ウィンがぶんぶん首振った。
どうもこのガキ、こいつの外見に参ってるらしい。
――ま、分かるけどな。
戦闘さえなけりゃこいつ、どっからどう見ても儚げなお嬢様だ。
「けど、ホントにもういっちまうの?」
このチビの言葉に、たちまちルーフェイアの顔が曇った。
「その……ごめんね……」
「あぁぁっ! 姉ちゃん、泣かないでっ★」
思いっきりいつものひと騒動になる。
けどタシュア先輩がいるわけでもねぇのに、なんでこうなるんだか……。
「姉ちゃん姉ちゃん、ほら、これあげるからさ」
「え……?」
ウィンのヤツが箱を差し出して、びっくりしたルーフェイアが顔を上げる。
「お土産だよ」
「あ、ありがとう……」
それからそっと、ルーフェイアが箱を開けた。
――へぇ、気が利いてんな。
中から出てきたのは、ガラス細工の仔竜だ。
「かわいい……♪」
ルーフェイアも無邪気な笑顔になる。
「あらら、今泣いたなんとかが、ってやつかしらね?」
「おばさん、ンなこと言うとまた泣きますよ」
ただ幸い今は聞こえなかったらしくて、ルーフェイアのやつはガラスの仔竜に夢中だ。
「ねぇウィン、あたしたちには?」
「ナティねぇ、オイラに土産せがんでどうすんだよ」
ズレたやり取りに、聞いてたルーフェイアもシーモアも笑い出す。
「だいたいナティ、あたしらチームへお土産持ってってないんだ。もらおうったってムリだよ。
――それよりウィン」
前半から一転、シーモアの表情が厳しくなる。
「その仔竜の金、まさか――」
「ンなことないよ! これ、リーダーたちからなんだ。
だいいちオイラ、さっき失敗しちまってさ。だからお土産これだけ」
俺も勘ぐってたけど、どうやら掏ってきた金で買った、ってんじゃなさそうだ。
ルーフェイアのヤツあれで案外、チームの連中にも人気があったらしいから、その辺から金が出たんだろう。
――まぁ、出所がまともとは、かぎらねぇけどな。
けど今そこまで言う気は、俺にもない。