Episode:127
「もうウルサイのも来なくなったし、心配ないもん」
「おかげでやっと、寝れるってもんさ」
この2人が笑う。
実言うと例の騒ぎの後は、もっと大騒動だった。
なにしろそれまで知らん顔してた報道のヤツが押しかけてきて、やれ話訊かせろだのなんだの、挙句にシーモアたちを『引き取りたい』なんていうバカまで出る始末だ。
――ガルシィさんとダグさんたち、全部水ぶっかけて追い返しちまったけど。
中でもシーモアのやつが、そのバカな連中に言った台詞は名言だ。
「あんたら今まで知らん顔してたくせに、ちょっと放送見たくらいでなにさ。
ンなこと言うんだったら、このスラムの連中全員に、メシと金でも世話しなよ!」
この毒台詞に度肝抜かれた偽善者連中の顔は、あのゼロールさんがしっかりフィルムに収めてる。
けど誰がどう言おうと、シーモアの言ったことは正しい。どうせこの騒ぎが終われば、みんなばっちり忘れてスラムは置き去りだろう。
「結局は、あたしら自身でやるしかないからね」
このシーモアの言葉が、全てを物語ってるってやつだ。
もっとも凄いって点では、今回はナティエスのヤツのほうが上だったかもしんない。
こいつがスラムの生まれじゃないのは言動見ても分かっけど、今回放送されたのでも見たんだろう、けっこういい身なりの「親戚」って名乗る連中が彼女を引き取りに来た。
――それも、報道陣引き連れて。
動影映って有名になったナティを、引き取るとこでも報道させて、自分の利になるようにしたかったらしい。
とはいえナティエス、その大人しげな外見からは、想像つかねぇ毒持ってるやつだ。
あの時は悪かった、昔のことも家出したのももう言わないから戻って来いっていうその「親戚」連中に対して、あいついきなり言ってのけやがった。
「お父さんとお母さんの遺産、返しなさいよね!」
当然放映中。
親戚連中のうろたえぶりときたら、笑うっきゃなかった。
しかもナティエス、その「親戚」が引き取った自分にした仕打ちを、片っ端から言いたてたんだからたいしたもんだ。
もう親戚連中はほうほうの体で逃げ帰って、ついでに放送見てたスラムの連中から生ゴミ投げつけられてた。どっちにしろあの親戚連中は、これからめいっぱい後ろ指ささるハメになるのは間違いない。
武器も使わなきゃ血も見ちゃいないけど、ナティエスのやつの復讐はある意味完璧だ。
――気が付いちゃいないだろうけどな。
言いたいこと言ってすっきりしたんだろう、当人ははもう、ンな話忘れちまってるらしい。
「けどさ、ひと騒動だったけど、落ちついてよかったよね。
もう向こうのチームとのナワバリ騒ぎも、ないと思うし」
「よかった……」
俺が思うに、今回のいちばんの収穫はこれだろう。
今回休戦した上で協同作戦やったりのが良かったのか、この2つのチームは、次にリーダー変わる時にまとまることで話がついた。
まぁ聞いたとこじゃもともとひとつだったっつーし、元リーダーだったルーフェイアの親父さんやレニーサさん、クリアゾンのボスあたりからも話がいったらしい。
「そうそう、ガルシィがさ、ベルデナード来た時は寄れって言ってた」
「へぇ。
けどよ、また玄関の外で待たされたりしてな」
「もう、イマドのいじわる! そんなことするわけないでしょ」
反論してから、シーモアとナティエスのやつは笑った。