表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/131

Episode:123

「けどまぁ、近くてよかったな」

「うん」

 イマドの言うとおり、あたしたちがいた場所から駅前の広場までは、ほんのちょっとの距離だった。

 ただ歩道を駆け抜けているあたしたちはいいけれど、カニは車道を強引に走って?いるから、完全に交通妨害を起こしている。


「にしても、ロデスティオ軍ってのは何考えてんだろな?」

「あたしに訊かれても……」

 もしかすると、何も考えていないのかもしれないし。

 ともかく駅前の広場にたどりついて、あたしたちは足を止めた。

 人形が追いついてくる。


「上級魔法、行くから」

「わかった」

 なにしろあの大きさだ。ちょっとやそっとの魔法じゃ、びくともしないだろう。

 急いで呪文の詠唱――さすがに上級魔法となると、ちゃんと詠唱しないと発動させられない――を始める。


「遥かなる天より裁きの光、我が手に集いていかずちとなれ――ケラウノス・レイジっ!」

 上級雷系呪文が発動する。

 雷撃が天から駆け下って地を貫き、金属のこすれる音をたてながら鋼鉄のカニがくずおれた。


「やった……か?」

「わかんない……」

 普通だったら絶対にスクラップになっているはずだけれど、なぜか自信がなかった。

 あの赤い目が、まだこっちを見ている気がする。


「でもよ、これでおしゃかにならなかったら――げ、マジ?」

 近づこうとしていたイマドが、うわずった声を出す。

「そんな……!」

 あたしも信じられなかった。

 なにしろこの人形はあれほどのダメージを受けたのに、何事もなかったかのように立ち上がったのだ。


「どうなってんだよ!」

「そんなこと言われても……あ、もしかして……自己修復機能……?」

 ロデスティオ軍はそういうものを人形に搭載させようとしてると、以前聞いたことがある。


「自己修復機能だぁ?

 んじゃどうやって倒せってんだよ?」

「機能以上の負荷与えれば、たぶん……」

 ただこれだけの機能をもっているとなると、内部の肝心な場所が魔力や電撃に対して、絶縁構造になっているかもしれない。

 もしそうならお手上げだ。


「機能以上っておい、上級魔法以上のダメージ与えろってか? 冗談キツいな――っと」

 イマドがぼやきながら、カニの爪を飛び退って躱した。

 標的をしとめ損ねた目が、周囲を探る。

 瞬間、嫌なものを感じた。


「イマド、伏せてっ!」

 警告しながらあたしは呪文を唱えた。

 鋼鉄のカニに装備されている、砲門に光がともる。


「――ルス・バレーっ!」

 ぎりぎりのところで呪文が間に合って、あたしとイマドは光の矢に薙ぎ払われずに済んだ。

 焼け付くような熱さは感じたけど、それ以上はない。


「あんなもんまで装備してやがんのか。これじゃうかつに近寄れねぇな」

 イマドの言葉にあたしも考え込んだ。

 あれだけの雷撃を受けてまだ平気となると、もう手段が限られてくる。

「精霊――使うわ」

「まぁ、しょうがねぇな」


 精霊は町中では使わないのが基本だ。

 なにしろ効果範囲が大きすぎるし、それ以上に使った地点のエネルギー傾斜を、一時的とはいえ狂わせてしまう。

 でもこの状況じゃそんなことは言ってられなかった。

 それに幸いここは広いから、周囲もさほど巻き込まないで済むはずだ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ