Episode:121
「なんだ、何がどうなっている!」
「それがよく……」
混乱する治安維持部隊のやり取りが耳に入る。
「ははっ、慌ててやがる。正規軍のくせにしょうがねぇな」
「普通……びっくりするわよ……」
大規模な軍隊と遭遇したならともかく、相手はこれ以上ないくらいの小人数だ。
「けどよ、シエラの先輩たちなんてたいてい、この程度の人数で任務行くぜ?」
「治安維持部隊は、傭兵隊と戦ったり、しないもの」
言いながらもう1体潰した。
隣でイマドが、真後ろから切りかかってきた兵士を躱して、振り向きざまに魔法を放つ。
「ったく、後ろから来るなんざ卑怯なやつだよな」
「………」
そう言うイマド自身もよく同じ事をしてるから、どう答えていいか分からない。
「にしても次から次へとよく――今度はなんだ?」
「最新型。無機物じゃなくて生体人形、要するに合成獣で……」
「説明、サンキュ。で、どうすりゃいい?」
イマドが途中を省略した。
「弱点はね……ウィペラ・ツァンナっ!」
毒の呪文に、トカゲの親玉のような合成獣が、苦しげな咆哮をあげた。
「へぇ、毒に弱いのか」
今も毒の苦しさに暴れて、周囲の兵士を巻き添えにしてて、慌ててロデスティオの兵たちが銃口を向けてる。
――ごめんね。
本当だったら一撃で倒せればいいけど、今はさすがにその余裕がない。
「っと、いい大人がムキになるなって」
まだ新人なのか、構え方もおぼつかない兵士の剣を、イマドが跳ね飛ばす。
「いったいなんだ、あれは!」
「その、子供と思われますが……」
「なにバカなことを言っている、あれが普通の子供のわけがなかろう!」
ここの指揮を執っているらしい上級仕官が叫んだ。
「ですが、あれはどう見ても……」
「見かけは子供でも、あれは化け物だ!」
それを耳にしたイマドが、憤然とする。
「てめぇらが弱すぎるだけだろ」
もっともそんな呟き、向こうは聞いてない。
「例のものをこっちに回せ! 叩き潰してやる!」
「ですが、あれはまだ……」
「かまわん! いざという時にはテストも兼ねて使ってみろと、マルダーグ大佐の仰せだ」
仕官の言葉に、あたしとイマドは顔を見合わせた。
「今、『マルダーグ大佐』って言った……よね?」
「ああ。
ってことは、あいつを捕まえれば芋づるで、その大佐もとっ捕まえられるんじゃねぇか?」
そんな話をしながら、2人でもう一段前へ出る。
けど。
唐突に兵士が左右に分かれた。
「なんだあれ、デカいな」
イマドの言う通りかなり大きな人形が、こっちへ向かってくる。




