Episode:120
「ねぇシーモア、みんなの主な武器ってなに?」
「あん? まぁだいたいナイフか銃かな」
「そう……ナティエスは苦無よね?」
彼女はいつも、猛毒を塗った苦無を得物にしている。
「あ、でもあたし、ここにいるときは銃も持ってるから」
「そうなの?」
けどそれなら、かなり戦法の幅が広がる。
あたしはざっと周囲を見回した。
割合まっすぐな通り。少し奥には十字路と停められた車。
だったら……。
「あたしとイマドで、前線に出るわ。
シーモアたちは後ろの十字路と車使って防衛線とって、そこから弾幕張って。もし自動小銃とか手榴弾があったら、使っちゃっていいから」
「つ、使っちゃってって……」
ナティエスが信じられないといった顔になる。
「ナティの言う通りだよ。あんたはまだともかく、イマドはどうなる?」
「平気よ」
自信があった。
なにしろイマドは、母さんを上回る能力の持ち主だ。だとすれば間違いなく、周囲をあたし以上に把握できる。
「イマド、ホントに平気?」
「どうにかなるだろ」
心配したナティエスが訊いたけど、当のイマドの答えもあっさりしていた。
「ったく、あんたら2人ときた日にゃ……。
ま、いいか。そしたらともかく頼むよ」
シーモアたちが下がる。
「足枷がなくなったってか?」
「そんな言い方したら、悪いわよ……」
確かにシーモアたちにそばにいられると、巻き込みそうで力が出し切れないけれど、それはみんなのせいじゃない。
「それより、人形狙ってね?」
「――こうか?」
いきなり1機の旧型が、小さな爆発を起こしてひっくり返った。ついでに吹き飛んだ腕が、向こうのほうで兵士の頭に命中する。
「な、なにしたの……?」
「魔力暴走させただけだって」
どうってことない。そんな調子でイマドが説明した。
「心のないもんに魔力むりやり宿らせると、案外簡単に暴走すんだよ。だから外からちょっと後押しすると、すぐああなっちまうんだ」
「そ、そう……」
返す言葉が無かった。
なにしろ理屈では知っていたけど、実際に見たのはあたしも初めてだ。
――実家で開発してる兵器、急いで全部に魔力干渉防ぐ機能つけなきゃ。
イマドみたいな能力の持ち主が何人も出たりしたら、完全に戦略が崩れてしまう。
「さ、行こうぜ」
「うん」
2人で最前線へ飛び込んで、目に付いた人形を順番に叩いていく。
振り下ろされる腕をかいくぐって懐で魔法を放つと、中の思考石が暴走して、次々と動きが止まった。
もっと効率がいいのはイマドだ。間合いに入り込んだ人形を、あっという間に暴走させて片付けている。
しかも慣れてきたみたいで、視線さえ向けずに倒してた。
シーモアたちも上手く弾幕を張ってくれていて、部隊は完全に足止めされた格好だ。