表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/131

Episode:12

「ごめんね、あたし……」

「あ、こら、泣くな!」

 うつむいたあたしが泣き出す前に、イマドが止めた。


「けど……」

「だから、いいんだって。

 どうせやらなきゃいけねぇんだ、ここで一緒にやっちまおうぜ」

 彼はいつも優しい。


「ごめん……」

「だ〜か〜ら、謝らなくていいって。

 ともかくまずは朝メシ食って、それからな。それでいいだろ?」

「あ、うん」


 一方的に言い立てられて、思わずうなずいた。

 だいいちイマドの言ってることは、別におかしくもない。


「よし、それで決まりな。んじゃさっさと食いにいくか」

「そうだね」

 2人で部屋を出る。

 食堂は2層ほど下で、取った部屋でだいたい座る場所が決まっていた。


――どれにしよう?

 メニューを見て、毎度のことながら考えこんでしまう。

 書いてあることは読めるけど……どんな料理か分からなかった。

 イマドのほうはすぐ決まったみたいで、もうウェイターを呼んで頼んでいる。


「すみません、それでお願いします。

――あれ? お前頼まないのか?」

「だって……」

 そんなあたしをじっと見ていたイマドが、ふっと笑った。


「肉と魚、どっちがいいんだ?」

「え? お魚、食べたいかな……?」

 急に問いかけられて、反射的に答える。

「そうか。そしたらすみません、これも追加してもらえますか?」

「かしこまりました」

 気がつくとイマドがあたしの分まで頼んでくれていた。


「ありがと……」

「いいって。だいいちいつもだしな。

 にしてもこの程度かよ。んなの俺でも作れるっての」

 まだメニューを眺めながらの彼の言葉に、思わず絶句する。


――そりゃイマド、料理上手だけど。

 でもいくら船内の食堂とはいえ、ちゃんとしたシェフが作っているはずだ。

 なのにそれを「この程度」だなんて……。


「ねぇ、イマドって……どうやって料理とか、覚えたの?」

 いったいどこで覚えたのか、不思議になって尋ねる。

「ん? まぁいちおう、最初はお袋からな。

 あとは適当にそこらへんでか?」

「ふぅん……」


 きっとよっぽど家事が上手なお母さんだったんだろう。

――あれ?

 いちど納得してから、また不思議に思った。


「ねぇ、イマドのお母さんって、だいぶ前に亡くなったって……?」

「ああ。3つの時な」

「……? それでどうして……?」

 たった3つくらいで、こんなに覚えられるものなんだろうか?

 なんだかよく分からない。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ