Episode:117
「ドンパチやってるとこで、なにワケわかんねぇこと言ってんだか」
「きっとさ、お弁当とかおやつ、持って来てるんじゃない?」
あたしが牽制に魔法を放つ後ろで、みんなが容赦のない突っ込みをした。
向こうではまだ取材人が騒いでいる。
『だいたいっ、わ、私たちを狙わないというから、わざわざ――それに上手く軍を擁護する報道をしろって言ってきたのは、そもそも……』
わわわっと叫んで、後ろから取材人の仲間らしい人が集声機をもぎ取った。
怒声が飛び交うところをみると、これもしっかり放映されてしまったらしい。
「だからこんな企画、ヤだって言ったんだ!」
ぼやきつづける報道陣を見るうち、なんだか可笑しくなってくる。
理由はわからない。ただ慌てふためくその姿が、可笑しくてたまらなかった。
「ははっ、はははっ、マジ――マジ、バカじゃねぇの」
「馬脚って……あはは、このこと、よね……」
「くくく……ナマで漫才……はは……放映、しますって……?」
イマドもナティエスも、シーモアも笑い出す。
「つまりは真実を知らしめるふりをして、ウソを流そうとしてたわけか。
報道に携わるものとしては、最低の行為だな」
あたしたちとは対照的に、ゼロールさんの声は冷たかった。同業なだけに許せないらしい。
厳しい表情のまま、つかつかと歩み寄る。
「ガマルンド、キミがいながらよくこんな話に同意したな?」
どうやら知り合いがいたみたいで、きつい口調で問い詰めた。
「そうは言うけどな、こっちだってクビがかかっててな……」
「だったらこの仕事、辞めたほうがいいんじゃないか?」
知り合いの人が言葉に詰まる。そこへゼロールさんはたたみかけた。
「ジャーナリストが嘘を報道したら、おしまいだぞ。
その集声機と動影機はなんのためにある? 嘘を流して給料を稼ぐためか? そうじゃないだろう!」
放送局――たぶん――の人たちがうつむいた。
あたしがさっきから魔法で治安維持部隊を牽制しているから、周囲は嘘みたいに静かだ。
「俺の言うことが分かるんだったら、今すぐ妙な報道は止めるんだな。代わりに事実を撮っておけ」
言ってこの人が、あたしたちのほうへ振り向く。
「俺はこいつで必ず事実を撮るから、心配しなくていい。
――なにせ正当防衛だしな」
「そしたらさ、なるべくいろいろ撮ってね♪」
しっかりとナティエスがリクエストを出した。
「きっとね、これから面白いことがあるから」
「面白いこと?」
思わず訊き返したけれど、ナティエスもシーモアも笑うだけだった。
「ま、すぐに分かるさ。――っと、また来たね」
「一般兵か。めんどくせぇな〜」
イマドがぼやく。
「雑魚はスルーで、一気に中ボスかラスボスってワケにゃいかねぇのか?」
「そんなムチャな……」
なにかのゲームじゃあるまいし。
「いや、多分そうできると思うよ」
「え?」
さすがに呆れていたあたしの後ろから、シーモアがイマドの言葉を肯定した。