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Episode:116

『え〜、現場です。治安維持部隊はすでに到着しましたが、入り口付近で抵抗に遭っている模様です。

 人通りはさほど多くありません。おそらくは少年たちの抗争とから逃れるため、みな自宅にこもっているものと思われます。

 あ、すみません。どちらへ行かれますか?』

「うるせぇやっ! てめぇなんかさっさと踏み潰されちまえ!」


 取材人にいきなり集声機を向けられた人が怒鳴った。追いすがって何か聞こうとしても、その人は知らん顔で行ってしまう。

 取材人が仕方なく、別の通行人に集声機を向ける。


『あの、子供たちが派手に抗争をやるとの話ですが、どうですか? やっぱり怖いですか?』

「なにバカ言ってんだい、あの子たちの抗争なんかどうってことないよ。なにせあの子らは、あたしらは絶対巻き込まないからね」

 おばさんが言い返す。


『ではなぜ、閉じこもったりするんでしょうか?』

「あんた、頭悪いね。軍が来るからに決まってるじゃないか。

 ったくあいつらときたら勝手に上がりこんで貴重品持ってくわ、せっかくの食料は台無しにするわ。

 挙句に若い娘さんなんか、なにされるか分かったもんじゃないしね」

『は、はぁ……』


 おばさんの物言いに、取材人が絶句した。

 後ろの動影機のほうで、「カット、カットだ!」とか「もう流れちゃいました」と言って、報道の人たちが慌てている。そのあとメモを持った若い人が、取材人のところへ駆けてきた。

 メモを見て、取材人が姿勢を正す。


『え〜、ウワサには聞いておりましたが、ここの住人は軍に対し、かなり間違ったことを吹きこまれているようです。

 やはりこれも、教育が行き届かず……』

 隣のナティエスが息をのんだ。シーモアとイマドの表情も険しくなる。


「なんかすっげぇ腹たつな」

「ぶん殴ってやろうか?」

「でも、動影で流されちゃうよ。まずくない?」

 戸惑いながらあたしたちが遠くから見ているなか、取材人は構わずに続けている。


『我が番組の調査では、ここの子供たちの4割が学校に行っておらず、路上でスリやひったくりをしながら――?!!』

 好き勝手なことを言っていた取材人の言葉が、急に途中で途切れた。

 考えるより先に身体が動く。


「――ヴェゼ・ジーヴルっ!」

 なんのはずみか取材人へ迫ってきた、人形の足元に冷気魔法を放つと、思惑通り片足が凍りついた。

「ルーフェイア、あれじゃ倒せてねぇぞ」

「大丈夫」

 言っているうちに派手な音とともに人形が転倒して、兵士が2・3人巻き込まれる。


「情けねぇ……」

「あの人形、旧式で頭が重くて、足元狙うとひっくり返るの」

 呆れてるイマドに説明した。


「――ヤダ、みっともな〜い」

「っていうか、それで兵器って言うのかね?」

 ナティエスとシーモアも呆れ返る。

 でもそれ以上の反応を見せたのが、取材人たちだった。


『ななな、なんで私たちを狙うんだ?! 私たちは、その、無関係な……』

 集声機を握ったまま慌ててるとこを見ると、ここがどういう場所か全く分からずに取材してたらしい。





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