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Episode:115

◇Rufeir

「あんたたち、なに民間人に刃向けてるのっ!」

 母さんの怒声と共に銀光が閃いた。

 剣をはじき飛ばされて、兵士が膝をつく。


「ずいぶん強い人だな」

 くっついてきたゼロールさんが感心した。 

「うちの両親、いちおう現役で傭兵稼業こなしてますから。

――大丈夫ですか?」

 答えながら、兵士に素手で立ち向かおうとしていた男の人に、あたしは駆け寄った。


「た、助かったよ。もうダメかと思った」

 男の人の後ろには奥さんと、抱きかかえられた赤ちゃん。

 ゼロールさんがすかさず写影に撮った。


「女房と子供を、スラムの外へ出そうと思っただけなのに、途中でこいつらに出くわしちまって……」

「おっさん、もう出るのはムリだよ。早く家へもどった方がいい」

「シーモア?」


 声に振り返る。

 炎色の髪をした、見慣れた姿があった。

「こっち、終ったよ♪ あれ? ルーフェイアじゃない」

 ナティエスもどこからか出てくる。


「2人とも、どうしてここにいるの?」

「そんなびっくりした顔しなさんなって。

 ボスなんかに言われてね、スラム中に知らせてたのさ」

「あ、それで……」

 どうりで辺りが静かだったわけだと、納得する。


「けどよ、この状態で知らせたって無意味じゃねぇのか? よほどのバカじゃなきゃ、見りゃわかるぜ」

「別にただ『来た』って、言ってるわけじゃないからね」

「――?」

 それ以外に、何を伝えてるんだろう。


「はい、お喋りはそこまでね。やることが山積みなんだから」

 一通り兵士を蹴散らし終わった母さんがもどってきた。

「連中いったん引いたから、次は本格的に来るわ。あたしはディアスの方へ回るから、ここは頼んだわよ」

「わかった」

 さっき父さんから聞いた話じゃ、このスラムで人形を持ち出せそうな広い通りは、ここともう1本しかないのだという。


「イマド、連絡役お願いね。

 んじゃ向こう、片づけてくるから」

 それこそ片づけものをしてくるような調子で、母さんの姿が路地へ消えた。


「緊張感とか、カケラもねぇ人だよな」

「だから、言わないで……」

 イマドの言葉に思わずため息をつく。

 しかもあれで、意外にも失敗しないっていうのが……。


「ほんと、似てない母娘だね。なにせ――なんだい、ありゃ」

 何か言いかけて、シーモアが違う方を指差した。


「やだ、なにあれ」

「報道関係……みたいだけど……」

 動影機を担いだ人と取材人の組み合わせだから、それ以外にはちょっと考えつかなかった。

 しかももう、放映が始まっているらしい。





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