Episode:114
「武器、ちゃんと出した?」
「あんたねぇ。
あたしだって学院生だよ。武器出してないわけないって」
彼女がいつもの不敵な微笑みで返してくる。
――そうだよね、やっぱりこうじゃなくっちゃ!
「部隊はやっぱり、南から来るのか?」
立ったまま食べながら訪ねたガルシィに、ダグが答える。
「レニーサさんはそう言ってたな」
「そうすると、南の住人がいちばん先だな。それぞれ一区画づつ受け持って、その先はそこの住人に任せるしかないか」
「オッケー、そしたら俺、食い終わったから行ってくる。1丁目の44番地と、その北側な」
「頼んだぞ」
まず先陣を切って、ウハニが出てって。
「さ、うちらも行こう。
ガルシィ、あたしはナティと1丁目の29番と30番まわるよ」
「わかった。俺もすぐに行く」
あたしとシーモアも食べ終えて出ようとしたとき、また人が来た。
「あ、レードさん?」
クリアゾンのメンバーが直々にここ来るなんて、珍しい話。
――まぁ、非常事態だからなんだろうけど。
「お、ダグもいるのか。こりゃ都合がいい。もうお前ら、話は聞いてるな?」
「はい、聞いてます」
さすがのガルシィも、この辺の人相手だと一応口調が丁寧。
「そのことなんだが、ボスから付け加えだ。いいか……」
気になるから、ちょっとだけ聞き耳たててみる。
「どうせこの時間じゃもう、逃げるのはムリだ。だからみんなして、家にこもるしかないだろ。
そこで、だ」
これには思わず、あたしも身を乗り出しちゃって。
もちろん説明がされるにつれ、みんなの目も輝き出して。
「そいつは面白そうじゃねぇか」
「うん、ぜったいいい!」
「よし、そうと決まったら、急いで知らせに行かなきゃね」
急にアジトの中が活気付く。
「ナティ、行こう!」
「もちろん♪」
「あ、ちょっと待て」
けど出ていこうとしたら、リーダーに呼びとめられちゃって。
「もう、なによ。時間がないって言ったの、リーダーでしょ?」
「ああ。だからこれを使え」
「あ……♪」
思わずシーモアとあたし、にこにこしちゃった。
なにしろリーダーが出してくれたの、浮遊ブレード。板に小さい浮遊石が仕込んであって、ちょっとだけ宙に浮く。だから雪の上のソリみたいに、乗ってちょっと片足で地面蹴るだけで、すいすい進むの。
あとは重心を変えたりして、自由自在。高価いものだから滅多に使わせてもらえないけど、これがあればグンと早く知らせに行ける。
「ホントにいいのかい?」
「非常時だからな。それにちゃんと人数分あるから、気にしなくていいぞ」
「やったね!」
あたしとシーモアと、ひとつづつ受け取って。
「ナティ、あんたちゃんと乗り方覚えてるかい?」
「そういうシーモアこそ、大丈夫なの?」
もっとも言う気持ちは、わかんなくもなかったり。
だって実は浮遊ブレード、学院じゃ禁止。とはいえ、けっこうみんな見つからないようにして乗ってはいるんだけど。
「けどこれなら、1丁目まですぐに行けるよね?」
「あんたが転ばなきゃ行けるさ」
「――もう!」
そしてあたしたち、通りへ飛び出したの。




