Episode:113
「その話、本当なのか? だいいち、どうしてそういう話が急に持ち上がったんだ?
ともかく、みんなをどうにかしないと……」
そうよね。
治安維持部隊なんて来ようもんなら、あたしたちまっさきに槍玉に上がっちゃうもん。
それにこの辺の人たちも、避難させなきゃ。巻き込まれちゃったりしたら、良くて逮捕、最悪だと収容所送りになりかねないし。
「ともかくウソじゃねぇって。
なにせレニーサさんから連絡あったんだ。で、町中に知らせて回れってさ」
後ろからついてきたダグもそう言って。
「部隊はいつごろ来るんだ?」
「よく知らねぇけど、だいたいあと3、40分かそこらって言ってたぜ」
――うそぉ?
隣でなんとなく話を聞いてたあたしも、さすがに青ざめちゃった。だってたったそれだけじゃ、いちばん逃げなきゃならない小さい子連れたお母さんとかが、逃げらんない。
こうなるとあとは、家の中に閉じこもってるしかないんだけど……。
けどこの国の治安部隊って、はっきり言って「治安悪化」部隊。もう勝手に上がりこんできて貴重品持ってっちゃったり、食料盗んでったり、その辺の人を殴ってストレス解消したり。
若い女の人なんてなにされるかわかんないし、ちっちゃい子だって危ないったらありゃしないし。
なにしろ子供がちょっと兵隊に逆らっただけで、家族ごとD地区の収容所に入れられちゃったって言う、嘘みたいな話まであるんだもの。
「ともかく手がたりねぇ。うちの連中はもう2丁目へまわしてあるけど、お前んとこも手伝ってくれ」
「分かった。
――おい、お前たち! のんびりしてるヒマがなくなったぞ!」
ガルシィがおっきな声を出して、いきなりアジトが騒がしくなって。
「治安維持部隊が出動するらしい。町中に知らせるぞ!
ダリード、お前はアサルタンテとその下の連中に、片っ端から連絡しろ。方法は任せる」
ガルシィに命令されて、ダリードが飛び出してった。
ちなみにアサルタンテってのは、強盗を専門にしてる少年グループのこと。もちろんあたしたちなんかより、グループの数も人数も多いの。
けどほんと、うちのリーダーって切れ者よね。
こゆとこすぐ頭まわって、どんどん指示だしてくれるもん。
「もたもたするな、俺たちもすぐに出るぞ」
「待てよガルシィ、朝メシくらい食わせてくれって」
「ダメだ」
容赦もないけど。
「あ、朝ご飯途中まで作ってあるから。適当にサラダとパンとスープ、つまむくらいならできるよ」
「ひゃぁ、ナティ、恩に着るぜ」
「じゃぁあとで、なんかプレゼントでもしてね♪」
「――ひでぇヤツだな」
ムッとすること言うから言い返す。
「いいわよ、そしたら食べさせないもの」
「ひえぇ、ウソ、ウソだって!」
「ナティ、なに朝から漫才してるんだい」
髪を乾かし終わったシーモアが、入ってきた。
「あたしのせいじゃないもの。それよりシーモア、話聞いた?」
「ああ」
さすが。
頭洗って乾かしながら、シーモアってばガルシィの言葉聞いてたみたい。