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Episode:11

「さぁ、もうそれはいいですから、船にお乗りください。

 ここまで来て乗り遅れてしまっては、話になりませんよ」

「え、あ、そうね……」

 ひとりの男性――名前はドワルディ――が先に立って案内してくれた。


「こちらの部屋を、押さえましたので」

「――個室の一等かよ。やっぱ半端じゃねぇな」

 イマドが驚いたような声を出す。

「え? いつも……そうだけど?」

 両親に連れられてあちこち渡り歩いていた頃から、船も列車もたいていは個室だった。


「金あるな〜。

 まぁ……お前に不自由させたら、首が飛ぶんだろうけどよ」

「そんなひどいこと――!」

 思わずそう言うと、ドワルディがまた笑った。


「それも確かにありますが、グレイス様のようにお優しいと、我々も一生懸命になりますよ。

 ところでロデスティオの、どちらまでいらっしゃるのですか?」

「ベルデナードのスラムなの。ただ、番地まではちょっと……」

 だいたいは子供たちから聞き出しているけれど、あの子たちも住所まではさすがに知らなかった。


「わかりました。ベルデナードの方にすぐ連絡して、詳しいものを待たせておくようにします。

 あと船内や車内での細かい事ですが……どうやらお友達がご存知のようですね。

――グレイス様をよろしくお願いします」

「あ、はい」


 イマドが慌てて答えた。

 ドワルディが一礼して出ていく。


「――お前マジ、お嬢様なのな」

「そんなんじゃないわよ……」

 だいたいこの世のどこに、戦場で太刀を振り回す深窓の令嬢がいるんだろう。

 ため息をつきながら部屋のソファに腰掛けた。

 イマドの方は、切符を見て時間を確かめている。


「ワサールに着くのが……やっぱ明日の2000か。けどベルデナード行きの最終に乗り継ぎできるから、ラッキーだな。

 って、あの人らがそんなヘマやるわけねぇか」

 なんかひとりで感心している。


「しっかしこれからしばらく、ひたすら乗るだけってか。ヒマだな」

「あ、あたし宿題、持ってきた」

「は?」

 イマドが硬直した。


「んなもの……持ってきたのか?」

「うん。物理と数学と世界史、もう課題、出てたし」

「いや、そりゃ確かに出てたけどよ……普通持ってこねぇぞ?」

「え? そうなの?」

 なんだか微妙に会話が食い違う。


「でも、せっかく課題、でたから……」

 早くやらないと、出してくれた教官に悪い気がする。

 けどどう見てもイマドは嫌がっていて、なんだかこっちにも悪いことをしてしまったみたいだった。

 自分の気のまわらなさに、情けなくなる。




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