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Episode:107

「ありがと、助かるわ。

――ごめんね、頼りになんない親で」

 そう言って母さんがあたしを抱いて、頭を撫でた。

 久々の――この感じ。


「ううん、いいの」

 ちょっとだけ泣きたくなる。

「ほら、泣いたら写影に撮るわよ。最近のがないから、狙ってるんだから」

「もう!」

 慌てて離れる。

 母さんのほうは今度は、イマドを起こしにかかった。


「ほらイマド、あんたも起きなさいって。寝てる場合じゃないわよ」

 かなり乱暴に揺すり起こす――と言うより揺すり「落とす」。

「ってぇ★

 あ、おはようございます……?」

「もう、寝ぼけてんじゃないの! 出かけるわよ!」

 いきなりこう言われて、さすがのイマドもなんのことか、分からなかったみたいだ。


「出かけるって、どこへです?」

「黒幕のとこに決まってるでしょ」

 イマドが『なんのことだ?』って顔であたしを見る。


「あのね、昨日観たって言う邸宅……あったでしょ? あそこの場所と持ち主、分かったんだって」

「あ、なるほど。けど、どうして俺が出かけるんです?」

「ルーフェイアが行くって言うから」

 わけのわからない説明を母さんがする。

「あ、そですか。んじゃ俺も……」

 でもイマド、それで納得してしまった。


「いい子ね。じゃぁ行くわよ」

「へ? もう行くんですか?」

「なによ、文句あるの?」

「だって俺、メシ……」

 まだ起きぬけで、いまひとつペースが上がらないイマドが、それでも母さんに抗議した。

 けど、このくらいで動じる母さんじゃない。


「ったく、なに言ってんのよ。戦場出たら食べてるヒマないのなんて、しょっちゅうなんだから」

「んなこと言われても……」

 夕べあれだけ食べてたのに、しっかりお腹がすいてるみたいだ。


「しょうがないわねぇ。レニーサになんかもらってあげるから、車の中ででも食べなさいね」

「あ、すいません」

 なにか食べられると聞いて、イマドは少し元気が出たらしい。

 でも、結局なにももらえなかった。


「カレアナ、大変よ!」

 真剣な顔で、レニーサさんが部屋に飛び込んでくる。

「ん? どしたの?」

「治安維持部隊に、ここへの出動命令が出るらしいわ!」

「――はい?」

 母さんが間の抜けた返事を返した。


「治安維持部隊って、治安維持部隊よねぇ?

 別に戒厳令も出てないのに、なんでそんなものがくるわけ?」

 なにかクーデターまがいのことがあったならともかく、治安維持部隊に出動命令が出るなんてよほどの話だ。


「それが……」

 レニーサさんが説明を始める。

 ことの発端は、例のシーモアたちの抗争だということだった。





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