Episode:104
泣くのもやめたほうがいいのだろうけど……自分でも情けないけれど、申し訳なくて可哀想で、涙が止まらない。
隣でイマドが、笑いながら立ち上がった。
「すいませんこいつ、メチャクチャ泣き虫なんですよ」
「ありゃ、そうだったのか」
なんだかヒドいことを言われる。
「もー、かなりすごくて、学院でもしょっちゅうこうなんです。それに1回泣き出したら、そう簡単に止まんないですし」
「イマド、ひどい……」
さすがに抗議する。ホントのことだけど、人前で言われるのはさすがにイヤだ。
「なら泣くなって」
「ごめん……」
思わず謝ったけど、まだ涙は止まらなかった。
そのようすを見ていたボスが、笑い出す。
「けど、泣いてるのも可愛いなぁ。うんうん、可愛い」
この人まで、母さんみたいな言い方だ。
「いまどきこの辺じゃ、そうやって泣く子もいないしな。いいじゃないか、女の子らしくて」
「そですかね?」
イマドが答えてる横で、必死に涙をぬぐう。
泣いてるのが「可愛い」なんて、言われるあたしは面白くない。
「よしよし、可愛いからやっぱり、何かあげよう」
「い、いいです……」
断って、それ以上泣かないようにガマンした。
イマドやボスや他の人がまた笑ったけど……ここで泣いたらもっと言われるだろう。
「とりあえずこいつ、向こう連れてきますね。つか、俺ら寝たいですし」
「おう、悪かったな。お嬢ちゃんのこと、慰めてやってくれ」
「はい」
イマドがあたしの腕を引っ張った。
「ほら、行くぞ」
「――うん」
あたしも立ち上がって続く。
後ろからレニーサさんもそっとついてきてくれて、いちばん奥の部屋にベッドを用意してくれた。
「さ、これで寝られるわよ。
そんなに泣いて疲れたでしょう? ゆっくり寝なさいね」
「――はい」
その言葉に甘えてベッドへもぐりこむ。
「けど、なんでボスの娘さん亡くなったんです? 雰囲気からだと、なんかあったみたいですけど」
「もうだいぶ前だけど、殺されちゃったの」
「ボスともあろう人の娘が、ですか?」
「それがね……」
すぐに眠くなってきて、イマドとレニーサさんとの会話が遠くから聞えた。
「あの……みなさんに、申し訳ありませんでしたって……」
「わかった、ちゃんと言っとくわね。だから安心していいわよ」
「はい……」
それを最後に、あたしは眠りこんでしまった。