Episode:102
「――しょうがないわね。けどボスが来てないから、ちょっとだけよ。
実はね、例のファミリーのボスの居場所、わかりそうなの」
「そりゃマジですかい!」
一斉に店内が色めきたった。
「そうか、それで叩きのめすために、あっしらを呼んだってワケか」
「けど、よく居場所がわかりやしたねぇ?」
誰かが不思議そうに言った。
今までどうやっても分からなかったみたいだから、当然なんだろうけど。
「この辺ウロついてるジャーナリストの彼が、情報持ってきてね。そこへ、子供たちが協力してくれたのよ」
「それでよく……」
また誰かが感心する。
「まぁ、途中ちょっとゴタついちゃったみたいなんだけどね。けど最終的にディアスが元売り捕まえてきて、それの口を奥さんが割ったのよ。
もっとも詳しい場所はまだで、夫婦して探りに行ってるんだけどね」
「――はい?」
一瞬、店の中が静かになった。
「今、『奥さん』って聞いたような……」
「言ったわよ」
再び沈黙。
「その……あのディアスが、女房連れてるんですかい?」
「そうなの。あたしも最初は驚いたんだけどね。実言えば、その可愛いお嬢さんが娘よ」
「えぇぇっ!!」
居合わせたクリアゾンの人たちが、一斉に声を上げた。
――けど、そんなに驚かなくたって。
もとを正せば父さんなんだろうけど、なんだか自分が悪いことをしたような気になる。
「娘って、娘って……。
でも確かに、言われてみれば似てるか……?」
「そりゃ、あの美形の娘だもの。あなたみたいな熊親父とは違うでしょ」
「あ、ひでぇ」
さっき以上に人があたしの周りに集まってきて、今度こそ見世物のようになってしまった。
なんだか恥ずかしくて、つい下を向く。
「お前たち、どこでその子拾ってきた?」
男の人がまたひとり店に入ってきた。
「バカヤロウ、みんなして取り囲みやがって。ほらみろ、怯えてるじゃないか」
「あ、ボス」
呼ばれかたからすると、どうやらクリアゾンを束ねている人らしい。
年は……40代くらいだろうか?
黒い髪。黒い瞳。背もそんなに高くないし、身体つきもさほど逞しいわけじゃない。それに、ここのどの男の人よりも優しそうだ。
ただ、その眼光は鋭い。何気ない仕草からも、実際はかなりの腕を持っていることが分かる。
けど今ここでそれを見せる気は、全くないようだった。
「ったく可哀想に。
ほら、早く謝って向こうに行け」
「は、はぁ……」
まるで蹴散らされるみたいにして、大の男の人たちが、あたしに謝りながら離れて行く。
「悪かったなぁ。びっくりしたもんでつい、な。ほら、お詫びにこれやるから、勘弁してくれや」
なかにはまたお金を押しつける人がいて、本当に困ってしまった。