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Episode:101

「悪いわね、こんな夜中に。折り入って相談があるのよ。もっとも話は、全員集まってからになっちゃうけど」

「そりゃもう。

――あれ、可愛い子がいるじゃないスか。ほら、おじさんとこおいで」


 にこにこ顔で手招きされた。

 困ってレニーサさんを見る。


「ほんと、あなたも子供好きよね。

 けどもう寝かせるところだから、少しにしてあげて。あと、お酒なんか飲ませないでね」

「わかってますって。ほらお嬢ちゃん、こっちおいで。何か食べるかい?」

 なんだか断るのが、申し訳ないような笑顔だ。けど食べたあとだから、食べたくても食べられない。


「えっと……その、さっき夕食はいただきましたから……」

「そうか。そりゃそうだろうなぁ、なにせこんな時間だし。じゃぁ果物でも食べるか?

 そっちのボウズは何がいい?」

「あ、そしたら俺、ワイン」

「おいおい」

 でも苦笑しながらワインを出してしまうあたり、このおじさん、本当に子供が好きみたいだった。


「こんだけだぞ」

「あ、すいません」

 ちゃっかりイマドも飲んでる。

 あたしの前にもいつのまにか、果物やお菓子、それに軽い食べ物が並べられていた。


「ほら、遠慮するな」

「あ、はい……」

 ちょっとだけ口に運ぶ。

 そのうえ気が付くと何人もの人が集まってきていて、すっかり見世物みたいになっていた。


「にしても、可愛い子だなぁ。ほら、お小遣いあげよう」

「あの、そんな……」

 みんな母さんみたいなことをする。


「いいっていいって、遠慮するな。それでなんか、好きなもんでも買いな」

 結局手のひらに強引に握らされた。

「あ、てめぇズルいぞ。ほら、おじさんもあげよう」

「でも……」

 だけど嬉しそうな顔を見ると、断るに断れない。


「そうそう、子供は素直がいちばんだ。明日になったら、2人でショッピングモールでも行っといで」

――明日、行く暇あるだろうか?

 ふっとそんなことを思った。

 それに行くとなったら絶対に母さんがついてくるはずだから、たまったもんじゃないだろうし。


 でも、大人に囲まれてるのは嫌いじゃなかった。

 ずっと戦場で育ってしまったあたしは、あんまり同い年くらいの子を知らない。むしろこうやって大人の中にいるほうが、慣れている分ずっと楽だ。


「よしよし。

 それにしても、うちのガキもこのくらい素直ならなぁ。もうでっかくなっちまったうえに、最近じゃ親父なんか知らん顔しやがって」

「あなたに似たんでしょ」

 おじさんのぼやきに、レニーサさんが容赦なく突っ込んだ。


「そんな言い方しないでも……。

 けどお嬢さん、今日の話ってのは、ホントのとこなんなんです?」

 これはあたしも訊いてみたかった。

 シーモアたちよりもう一段上のこの人たちが動くのだから、それなりの理由があるはずだ。





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